…逸ったな…愚物……!
白面の者が目を閉じた瞬間、その目を更に覆うように白面の者の尾が目の前に現れ、一つ目だけに限定された黒い妖怪の大群が婢妖を盾に生まれ、四方八方、手当たり次第に見える場所に向かって光線を放つ。
「
「グウゥッ!?」
目映い光線を蛮竜で防ぐも僅かに刀身をはみ出していた私の右肩を鋭い一閃が貫き、ジュウゥッ……!と肉の焼き焦げる嫌な臭いと今まで感じたことのない、全身を一瞬で駆け巡る激痛に襲われる。
そのまま痛みによろめき、白面の者の背から足を踏み外してしまう。蒼月君もまた脇腹を掠めるように光線を受け、胴鎧を砕かれ、吹き飛ばされる。
が、蒼月君は瞬時に身体を捻って体勢を立て直し、とらの身体に着地する。私は伸びてきた蛇に手を借り、海面に叩きつけられることはなかったものの、危うく海面に真っ赤な花を作り出すところだった。
「ごめん。助かった」
「油断するなよ、アレは大妖怪だ」
「えぇ、改めて再認識出来たわ」
ゆっくりと穴の開いたジャンパーを脱ぎ捨て、タンクトップ姿になりながら右肩を押さえる。うん、まだ動くわね。当たり処が良かった。
流石に、当たっちゃダメなんだけど。
そう自分で自分に突っ込みを入れながら、白面の者に深刻なダメージを与えることは出来ず、あの大妖怪を追い詰める状況にもたどり着けていない現状を打開する方法を模索する。
───いや、打開する方法はあるにはあるけれど。あの白面の者に竜鱗の蛮竜を使えるとは到底思えない。況してや人間の身体にあの邪気を溜め込めるか?
自分の考えだけど。否定できないな。
「一鬼、全力の金剛槍破を使う」
「戦骨の大技かッ…!」
「かなり溜めを作らないといけないんだけど。ちょっとだけお願いできる?」
「嗚呼、任せておけ!」
私の言葉に力強く応えてくれた一鬼に笑みを浮かべつつ、ゆっくりと私の身体に絡み付き、絶対に落ちないように固定してくれた彼に感謝しながら、最大まで金剛石の刀身に霊気を込めていく。
とらの背中に乗った蒼月君が獣の槍を薙ぎ、尾の一撃を弾く度、空気が切り裂かれ、イビツな空気の流れを作り出す最中、蛮竜の刀身に金剛石の槍が生まれる。あと少しだけ、もっと霊気を込めれば尾を砕ける。
そう思っていたその時、白面の者が私を見た。
させるものかァ……!!
「お妙さん!」
「その蛇をほどきやがれ!」
みんなが私を守るために集まろうとしたその時、充填の完了した蛮竜を振りかぶり、全身全霊の霊気を込めた大鉾を力任せに振り下ろす。
「金剛槍破あぁっ!!!」
ドガガガガガァ────ッ!!!!
妖気をはね除け、滅する金剛石の槍によって二本分の尾を消し飛ばす。生憎、私は守られるような女じゃないから安心していなさい。
……そうか。糸色、今はもはや貴様も我の敵か…ならば、我も相応の態度で示そう……!
「フフ、どうでしょうね」
白面の者の言葉に笑みを浮かべ、かなり減ってしまった霊気を回復するために静かに呼吸を繰り返しながら婢妖の群れを中腹から切り崩す。
ただ、二度目を撃つのは時間を必要とする。金剛槍破は蛮竜の技の中で、一番使い慣れているけれど。こうも力を込めて使ったことはなかった。
「(正直、このまま攻撃を繰り返して尾を壊していけば白面の者を倒すことは出来るかも知れない。───けど、蒼月君が獣に成るタイミングが分からない)」
悠長に戦い続けるのは危険だ。
けええええええぇぇぇぇ……!!
「儂の家来に何するつもりだ、てんめえぇ!!」
おどろおどろしい咆哮を上げ、迫り来る白面の者の横面に向かってとらの拳が、ドゴォンッ!!と重々しくめり込み、白面の者の突進を腕力で押し返してしまった。
流石は大将さんだよ、マジで頼りになる。
とらあぁ!!!
「じゃかあしいぃ!!!」
「先走るなって言ったヤツが先走るなよなあ!」
「うるっせぇーっ!!」
あの時と同じように、ハマー機関の研究所で白面の者の欠片と殴り合っていた時のように殴打と尾の応酬を繰り広げる二匹の
その強さに私は笑みが深まる。
やっぱり、強いのは良いね。