「…………っぱぁ?!…ゴホッ、げほっ!…」
海水を飲んだ気持ち悪さと鼻に入ってきた海水の痛さに咳き込みながら傷だらけの身体を海面に押し上げ、海水に濡れた顔を拭い、空を見上げる。
何もいない。
妖怪も自衛隊も人間もいない。白面の者も居らず、雲一つ存在しない綺麗な青空を見上げ、ぼんやりとするも直ぐに意識が戻る。
「みんな、どこに行ったの?」
辛うじて握り締めていた蛮竜の柄を握り締めたまま、うっすらと海面の先に見える港を見る。木製の船が多く、まるで昔の漁港みたいな……。
「おい。そんなとこで何してんだ?」
「え?あ、直ぐにのぐぎィッ、
小舟に乗った男に声をかけられ、泳いで離れようとした瞬間、右肩と全身に激痛が走り、沈みそうにる私のタンクトップの肩紐を掴み、私の事を小舟の上に引きずり上げてくれた。
しかし、船の揺れと痛みで気分を悪くする。
「ゔえっ…ッ、ありがと…」
そう言って砂浜に連れていって貰うに連れ、違和感が確信に変わり始める。私、どう考えてもタイムスリップしているわね。
稀に蛮竜が時間を開くとは聞いたことあるけど。
私が白面の者に潰される寸前に、どこかの時代に飛ばしてくれたと考えるのが妥当だ。……みんな、負けたりしていないかな?
そう少しだけ不安になりながら砂浜を歩き、ザバザバとジーンズやスニーカーから垂れる海水に溜め息を吐く。海水のせいでベタベタする上、着替えがない。
「へっくち!」
「流石に風邪引かれると困るぞ。ほら、着とけ」
「え、あ、ありがとう」
バサリと脱いだ着物を投げ渡され、ちょっと汗臭い着物を羽織って投網を担ぐ彼の後を追いかける。……いや、別に追わなくてもいいのか?
そう思っている間に掘っ立て小屋らしき家屋にたどり着き、部屋の奥に通されるなり、更に奥の部屋を指差す彼を怪訝そうに睨み付ける。もう蛮竜は無いけど、まだ私には虎翼は残っている。
「その濡れた着物は適当に置いとけ。向こうに俺の替えが何個か干してある、手拭いで悪いが頭を拭くなり体を拭くなり出来るだろう?」
「……貴方、何が目的なの?」
「弱ったヤツを助けるのは当たり前だ。それにお前の顔は知り合いに似ているからな。あと、海水に混じってるが蛮竜の臭いがした」
「……ごめん。名前だけ聞かせて?」
「俺か?俺は戦骨だ。戦に骨を埋めると書いて、戦骨だ。ちょっと暇だから今は漁師の手伝いしてんだよ。で、お前はいつも通りか?糸色」
「え?何で、私が糸色だって知ってるの?」
「いや、どう見ても糸色だろ」
もしかして、ご先祖様って戦骨と会ってる?