カァン、カァン、と鉄を打つ音が聴こえる。
その度に私の身体の中に入っているという蛮竜の欠片達も熱を帯び、私の頭の中に蒼月君ととらに出会った時の光景が浮かび上がる。
ちゃんと知っている。その頃はまだ糸色本家の奴らもうるさくて辛いことばかりで缶コーヒーを飲み続けていた。蒼月君の笑顔に何度も助けられた。
それから鏢のおじさんにも会って、ひょっとしたら自分よりも強いと思える人に出会えたことに安堵していたかも知れない。類と両親、爺やを除けば私をバケモノを見るように見つめていることがあった。
だから、安心していた。
私よりも強くてスゴい大人がいることに。
蒼月君ととらと海にも行ったし、空の上も飛んで衾なんていう妖怪も一緒に倒して、人に住み処を奪われた鎌鼬にも会い、なんとか説得したりもした。
そうだ、凶羅や強羅なんていう強い法力僧に蛮竜と獣の槍を狙われて力負けしたのもアレが初めてだった。私だけが強すぎるんじゃない、ただ他の人より先を歩いていただけなんだって分かっていた。
カァン、カァン、と鉄を打つ音が聴こえる。
遠野では妖怪に襲われて、しとりお婆様の過去を少しだけ知ることが出来た。他にも片山君や香上君、伏戸さんにも出会ったりして普通の女の子のように振る舞ったり、乗り物酔いで弱っているところを助けて貰った。
サンピタラカムイに悪い神様を倒すようにお願いされて、みんなで力を合わせて戦って、なんとか倒すことに成功した。あのときはとらが真っ二つにされて、ビックリしたのを良く覚えている。
シュムナなんていう霧の妖怪にも襲われて、徳野さんっていう男の人が自分を犠牲にして私達を助けてくれ、私は自分の無力感に苛まれた。ほんの数時間の間だったけど、とても意地っ張りな人だと今でも覚えている。
それから学生の頃の後輩だった日輪。私は覚えていないけど、幼馴染みを名乗る杜綱悟と杜綱純、私の大切な人になってくれた秋葉流とも出会った。
獣の槍に魂を喰われ、変わり始める蒼月君に蛮竜を傷つけられ、かつてしとりお婆様に力を貸してくれた妖怪達が蛮竜の中に飛び込み、その妖気を与えてくれた。
全部、私の大切な想い出だ。
カァン、カァン、と鉄を打つ音が止まった。
ゆっくりとを目を開ける。
熱を帯びて赤く紅く朱く太陽のごとく真っ赤に燃える蛮竜の刀身は砕かれる以前の物に戻っていた。いや、砕かれる以前よりも力強く鼓動を繰り返している。
「元々、蛮竜は戦骨の武具だった。ソイツを振るうにしたって遣い手を選り好みする上、気に入ったヤツにはとことん尽くす。お前の身体に取り込まれた欠片達は糸色の血を浴び、想いを受け、完全に
そう不満げに言うも彼は満足そうに笑った。
「糸色、お前なら勝てよ」
そう戦骨は私に言葉を告げる。
「当然よ、私は糸色妙だもの」
蛮竜の柄を握り締め、二人にそう宣言する。
「行くわよ、蛮竜!」
私の言葉に呼応するように蛮竜は鳴動し、私の身に付けていた着物がこの時代にやって来た当初のタンクトップとジーンズ、スニーカーに変わる。
本当に良いことするわね!!