そして、時刻は遡り、未来────。
「白面ええええぇんっ!!!」
くっくっくっ。己の無力に苛まれたか
お妙さんが命を懸けて切り離してくれた九本の内の二本は未だに再生しておらず、残り七本の尾を乱雑に振るい、空気を裂き、オレの握る獣の槍を弾く。
怒りのままに槍を振るう毎にギリョウさんの怒りと憎しみの声が聴こえる。憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎いッ!!お妙さんを殺したコイツがどうしようもないほどに憎くて仕方がない。
オレが倉で獣の槍を引き抜いてから、少し経った頃に井上を狙ってた餓眠様と戦っていたときにすれ違ったのがお妙さんとの始まりだった。
強くて優しくて、ちょっと抜けてるところがある。どんなに危ないときも怖いときも絶対にオレの味方で居てくれた。オレに姉ちゃんが居たら、こんな人なんだろうなと思えるぐらいに尊敬していたんだ!
「とらぁっ!!」
「雄雄雄雄雄雄雄オォォッ!!!」
とらだって、そうだ。
お妙さんに色んな物を食わして貰って、オレを喰うなんて言っていたのに、一緒に競うようにお妙さんが準備してくれた満漢全席を食ったりしてさ。
ずっと続いて欲しかった。
親父が居て、母ちゃんが居て、とらがいて、みんなが笑顔で食卓を囲んで一緒に食える。そこに、そこにさ、お妙さんと流兄ちゃんも加わるんだ。
そうオレは願っていたのにッ……!!
それを、お前はッ、お前がッ、奪ったんだ!!
「お前がお妙さんを奪ったんだァ!!」
「儂の家来をよくも殺しやがったなァッ!!!」
糟共が糸色は我の物、何人も渡しはせぬ。
……刻の狭間に紡がれた楔は変わりはしない…!
訳の分からないことを叫ぶ白面の者の尾を切り裂き、衝撃を散らすようにしなる獣の槍を両手で握り締め、とらの背中に着地する。
「まだ戦えるよなあ、とらッ」
「けっ。誰に言ってやがる、儂は蛮竜使いの大将だ!あんな狐野郎にやられっぱなしで、おめおめと家来の死も仇討ち出来ねえわきゃねえだろう!!」
「ああ、そうだ!!」
オレととらならお妙さんの仇を討てる!
絶対に許さねえ…!!
……お前は見えているだけか、ナガレ…
己を引き留めた女が死に狂ったか。同じ女に惚れた男を出し抜き、自分だけが手に入れた温もりが忘れられぬか、それとも己の愚行を悔いるか
その言葉にオレの頭の中で何かが弾けた。
「お前が流兄ちゃんを嗤うんじゃねえ!!」
オレよりもとらよりも流兄ちゃんが一番辛いんだ。それなのにオレを守るためにッ、血を流して結界を張ってくれている人を嗤うんじゃねえッ!!