オレがどれだけ獣の槍を薙ぎ、白面の者の外皮を切り裂いても切り裂いてもアイツは倒れず、むしろオレが攻撃を繰り出す度、嘲笑うように笑みを深める。
こんなヤツにお妙さんが負けるわけがない。
あの人はずっと強くて優しくて綺麗だったんだ。挫けそうになっても手を引いてくれて、獣の槍を知る旅もお妙さんととらのおかげで怖くなかった。
また、糸色の事を考えているな。くくくっ。うしおとやら、とらとやら、お前達はまさか浅はかにもアレを知った気になっているのか?
「────ッ、どういう意味だ!!」
あの女はお前達にとって、まさに光であろう。妖怪も人も惹き付け、魅了し、闇さえも照らす美しき太極の陰。その中に唯一無二の如く輝く一つ星なりや。
美しかろう。美しかろう。善も悪も全てを飲み込み、されども染まらぬ魂が、なんと美しきことか。愚物にも劣る芥共に分かるか
「けっ。要はおめえも儂の家来に惚れたのに見向きもされず、怒り狂って癇癪起こしたって話だろうが。儂らとおめえを一緒にするんじゃねえ!!」
一瞬、何を言っているのか分からなかったが、とらの言葉で納得した。奈落とおんなじだ。お妙さんに受け入れて貰えなくて、ただ駄々を捏ねているだけの子供とお前は変わりやしない!
「うしおーっ、おめえも何か言ってやれ!」
「お前なんか奈落とおんなじだ!!」
殺すぞ、貴様ッ……!!
「おーおー、怒りやがった。まあ儂もあんなのと一緒にされたら怒るけどよ。やってることはあんの半妖小僧と大して変わらねえだろうがな!」
ゲラゲラと白面の者をバカにするように高笑いするとらだったが、すぐに笑みは消えて、オレと同じように怒りが汲み上げてきているのが分かる。
そうだ。
コイツは奈落とおんなじだ。自分の欲しいもののために他人を利用していた姑息でずる賢い奈落にそっくりなんだ。そんなヤツにお妙さんがッ!!
「絶対にブッ殺してやる!!」
怒りで逸るか、浅はかな…
とらの身体を飛び越えて、白面の者の額に獣の槍を突き立てた瞬間、ピシッ……パキ、パキッ……!と獣の槍に罅が入っていく音がゆっくりと聴こえてきた。
くっくっくっ。終わった。ようやく終わりだ、あとはゆるりと帰りを待つだけ……獣の槍とはこんなにもか弱きものだったとはなあ……
オレを見つめる大きな目が翳り、オレに向かって振り下ろされた白面の者の尾を受け、オレはお妙さんと同じように海面に向かって叩き落とされた。
負けた、獣の槍が、お妙さんの仇も取れずに…!