ふと白面の者の空気が変わる。
私も同じように獣の槍の気配を感じ、ゆっくりと空を見上げる。綺麗な流れ星が飛び交っている。ううん、違う。アレは獣の槍だ。
流石は獣の槍、そう簡単には折れないわね。
おのれえぇ!!逃すものか、獣の槍ぃ!
「行かせるわけないでしょう!!」
そこをっ、退けえええぇっ!!
ガリガリガリィィッ……!!と、私の握り締める蛮竜を尾で殴り付けて弾き飛ばそうとする白面の者の攻撃を蛮竜の結界で受け止め、金剛石の刀身に変化させる。
「グウッ!?しとりの元へ行けば活路は見出だせるものをッ、妙!お前だけで数瞬、いや、十秒だ!持ちこたえることは出来るか!」
そう赤い目を私に向けて叫ぶ一鬼。
「それは楽しみね。行ってきなさい!」
今更、蚯蚓に何が出来る…!
一鬼の言葉を疑う余地無し。
私は蛮竜の刀身を踏みつけ、熱風を放ってイビツに跳ね上がりながら白面の者に大鉾を振り落とす。其処へ加わるように千を越える三日月状の法力が放れ、火が、風が、雷が、土が、木が、次々と私を援護するように白面の者の顔に叩き込まれる。
まさかと思いながらも後ろに振り返れば獣の槍は持っていないけれど。しっかりと東西の長を支えるカラス天狗に身体を持たれた蒼月君がいた。
全く本当にタイミングが完璧すぎるわよ。
「お妙っ、遅れた!」
「イズナ君、むしろナイスタイミングだよ!」
小さなキツネのイズナ君を抱き締めるように受け止め、ゆっくりと蒼月君に微笑みを向ける。良かったね、ちゃんと思い出して貰えたんだね。
「お妙さん、ごめん。遅くなった」
「問題ないわよ。私も遅れたからね」
そう言いながら私の身体を支えるために手を差し出してくれたかがりさんに「ありがとう、助かるわ」と伝えて、白面の者の遥か後方に聳える石柱に居るしとりお婆様の方へと視線を向ける。
「相生召喚 樹装一鬼!」
遥か遠くに居る私達にも聴こえるほど声が響く。
しとりお婆様の猛る声と逆巻く水を纏い、白面の者の背後に現れた大槌を構えた一鬼の姿に思わず目を見開き、彼の纏う妖気の性質が変わった事に笑みを深め、流石は妖逆門でしとりお婆様の鬼札と納得できる強さ。
あとで本気の戦いがしたいわね。
逆門の力を引きずり出したか、しとりめぇ…!
「さあ、みんなで行くわよ!」
「行こうぜ、みんなあっ!!」
「「「「「「おう!!」」」」」」
私と蒼月君の言葉に白面の者と対峙する全員が答え、頷き、絶対に負けるものかと強く強く強く念じ込まれた意志が伝わってくる。
とら、さっさとしないと本当に置いていくわよ。