結界壁の中に飛び込む瞬間、僅かに結界の綻んでいる場所を感じ取って向かうべきかと考えるも杞憂だった。他の僧侶には悪いけど、ものすごい法力を感じる。
強羅と凶羅の二人だ。
あの夜以来会えていないけど。
この戦いが終わったら流君との事を話しておかないといけない。そのためにも彼らに死なれるのはどうしようもなく困るのよね。
我を追い詰めたつもりか
くだらぬ。
我は白面、我は不死、我は無敵
今度は獣の槍諸とも破壊してやる…!
まるで、そう自分に言い聞かせるように言葉を紡ぐ白面の者の怒りと憎しみ、恨み、妬み、嫉み、悪意の感情が溢れるように言葉が溢れ落ちる。
「お婆様が言っていたわ。絆とは決して断ち切る事の出来ない深いつながり。例え離れていても心と心が繋がっている。───白面の者、あなたがどれだけ人の記憶を消そうとね、誰かのために歩み続けていた蒼月潮ととらが居る限り、想いは繋がるのよ……!」
「けっ。要はおめえらが儂の強さに憧れているって話だろうが!」
「多分、そう言うんじゃねえけどなあ!」
私の言葉にとらが答えながらも雷撃を放って拳を振るい、蒼月君の振るう獣の槍が黒い妖怪を生み出す白面の者の尾を切り裂き、粉々に破壊していく。
それでも尚、白面の者の視線は獣の槍、その近くに立って振るわれる蛮竜に向いている。ただただ槍と大鉾の二振りを警戒している。
ジットリと睨み付け、動きの一節を見逃さぬように巨大な目を僅かに見開き、私達の握り締める
このまま押し切れば行ける。現に、白面の者の身体はひび割れ、いつ崩壊しても可笑しくない。それだけ傷付いているということだ。
ふと、あることを思い出した。
奈落、あの男は白面の者を狙っていた筈だ。
こんな身動きも取れず、弱っている白面の者を見逃すとは思えない。まさかと思い、しとりお婆様達の方に視線を移したその時、狒々の毛皮を纏っていない奈落の姿を見つけ、ギリィッ…と歯軋りしてしまった。
「お妙ッ、どうかしたのかよ!?」
「しとりお婆様と御角お婆様、それに蒼月君のお母さんや井上のお嬢さんのところに奈落がいる。アイツ、ずっと白面の者が弱るのを待っていた」
「───ッ、長飛丸!!お前の後ろに居る男を吹き飛ばせッ!長、戦場を離れる不忠義をお許しを、俺にしとりを助けに行く!!」
「赦す。友のために駆けよ!」
「私のお婆様をお願いね、一鬼」
そう言うと私は一鬼の背中を飛び降りて冷気を発する冷たい氷の地面に着地し、巨大な白面の者を見上げる。今度の私はこの氷上を自由に駆け回れるわよ。