毒気の中で繰り広げられる攻防を見つめつつ、私は身体を侵す白面の者の振り撒いた猛毒によって血を吐き、血涙、鼻血する身体に手のひらを押し付け、破魔の霊気を直接身体に送り込み、毒気を中和する。
流君のおかげで窮地は脱したけど。
この毒気の中を駆け抜けるには防具も無しに動くことは難しい。……いや、蛮竜の風の傷と熱風を纏っていけば毒の霧をはね除ける事は出来る?
一か八かの賭けどころか、ほとんど命綱無しの行為だってことも分かっている。でも、こんなところで立ち止まっている暇はない。
「蛮竜、私に力を貸しなさい…!」
私の言葉に呼応するように蛮竜は鳴動し、私の身体を青白い雷撃で包み込み、毒の霧を防ぎ、逆に焼き焦がしている。成る程、これなら常に風の調整に意識を向ける必要もなくなるわね。
ゆっくりと立ち上がって流君の作ってくれた結界の外に飛び出し、雷光を纏って氷上を蹴り、流君と戦っている奈落に蛮竜を振るい、その身体を切り裂いた。
「当事者の私抜きにやるつもり?」
「まさか、俺とお前は一緒だろ?」
私は傷付いて尚も立っている流君に、そう問いかけると彼は嬉しそうに鉄製のマスク越しに笑った。色々と聞きたいこともあるけど。
最優先は目の前の奈落を倒して、蒼月君ととらのところまで向かうこと。っていうか、こんな大事な瞬間に現れる空気の読め無さは直した方がいいわね。
「何故、貴様ごときに糸色が靡く。儂が五百年前に出会ったときもそうだった。あやつは儂ではなく他の男に微笑みを向けていた」
「だろうな。横恋慕は好かれねえよ」
「そもそも私はシンプルに貴方が嫌いだわ」
そう言うと悔しそうに恨めしそうに奈落は流君の事を睨み付け、チラリと私の方に視線を向けてきた。しかし、何かをすふわけでもない。
「ところで、その傷は治さないのかしら?」
「何を言っている?既に治ッ!?」
私の言葉に訝しげに肩を見た刹那、奈落の身体に伝播するように雷撃は進行し、流君も目を見開いてビックリしている。
「妙、なんだよあれ」
「私なりに対策したのよ。不死身に近いなら復活できないぐらい連続でダメージを与え続ければいいって、だから死ぬまで痛みを受けなさい」
蛮竜の切っ先を突きつけ、奈落を見据える。
悪意も善意も関係ない。私は人の恋路を邪魔して、自分だけが幸せになろうとするタイプのヤツが大っ嫌いなのよね。まあ、それを言ったら婚約者候補の二人を出し抜いた流君もそうなのかな?
あとで、四人で話し合わないとね。