私と流君、奈落が戦う氷上のその更に上に立ち込める毒気の中で青白い雷撃が煌めき、嵐の匂いと金属の衝突する音が聴こえる。
おそらく蒼月君ととらの二人だ。白面の者と戦っている音を聴きつつ、奈落の振るう触手を払い薙ぎ、シャランと錫杖を鳴らし、流君は私の放つ風の傷の軌道を変化させ、変則的な角度から奈落の身体を切り裂く。
「流石、私の動きに付いてこれるわね」
「お前を守るって決めたからな」
「ハハハ、頼りにしている!」
「そうかい。なら期待に答えねえとなあ!!」
そう言って私の隣に立つ流君。
やっぱり強羅と杜綱悟よりも強くて、私をあと少しのところまで追い詰めた彼の存在はどうしようもなく心強く、奈落や白面の者が揃っている最悪の戦況だと言うのに気分が昂っていく。
蛮竜の形態を鉄の刀身を戻し、闇夜や夜空を彷彿とさせる漆黒の刀身に変化させる。金剛槍破より範囲は狭いし、使い勝手も悪いけど。
毒気も一緒に吸い込める…!
「冥道残月破っ!!」
「どわっ?!」
「ぐぅっ!!」
一文字の冥道を開き、飛び裂けるあの世に通じる穴はブラックホールのごとく周囲の大気を呑み込み、毒気を吸い上げ、奈落の傷付き、飛び散っていた身体の破片をあの世に引きずり込む。
「流君、此方に来て!」
「竜鱗や金剛石よりヤバい技もあるのかよッ」
「まあね。一応、私の蛮竜に備わっている妖怪の奥義の中で破壊力に関しては金剛槍破は最強だけど。冥道残月破は何でもかんでも吸い込む奥の手だね」
そう言って笑うと「お前と戦ってたときに使われたら、マジであの世行きだったわけか」と冗談めかして呟く彼は吸い込まれないように、私の身体を抱き締めながら錫杖で結界を作り出している。
「まだ、儂にはこれがある」
「ありゃ、石か?」
「……違う。アレは、核鉄…!」
「武装錬金ッ」
私はまだやる気なのかと顔をしかめたその時、武装錬金を発動した筈の奈落は巨大な檻の中に入り、氷上を砕いて海の中に沈んでしまった。
重さを増して冥道残月破を躱した?
いや、そういう感じじゃなかった。まるで自分の内側にいる何かに身体を掴まれ、海の底に向かって引きずり込まれているように見えた。
「妙、うしおのところに行くんだろ?」
「えぇ、糸色としてやることがあるから」
「ちゃんと帰って来いよ?」
「うん。任せなさい」
私は流君に鉄製のマスクを着けてもらい、青白い雷撃を纏ったまま毒気の中を駆け抜け、さっきよりも小さくなった白面の者と目が合う。
やはり生きていたな。糸色の血筋…!
「当たり前でしょう!!」
蛮竜を目の前に飛ぶ白面の者に振り落とし、いつものように私は言葉を叫ぶ。
「────だって、私は糸色妙だもの!!」
私が私である限り、負けることはない!