「おのれぇ、何故我らの邪魔をする!」
「何故って言われても困るわね」
禿げて頭皮の見える空飛ぶ頭は怒髪天の如く揺らめく後ろ髪を投網の様に振り撒き、私の身体を縛り付けようとした瞬間を狙い、ぐるりと虎翼を回転させる。
朱染めの柄に絡みつく毛を固定するために穂先をコンクリートの地面に突き刺し、空飛ぶ頭こと飛頭蛮の動きを完全に封じ込める。
「ぐぬおおおおおぉっ!?何故だ、何故外れん!?我の力が、ただの槍ごときに負けるわけがない!何をしたあああっ!!」
「ギャーギャーと騒がなくても聞こえているわ。その霊槍の名前は虎翼、戦国時代に造り出された仕込み槍で妖怪を縛り付ける呪符を大量に柄の中に仕込んでいる、私のお気に入りよ」
私の言葉なんて一切聞いていない飛頭蛮の目の前に移動し、地面から虎翼を引き抜くと同時に飛頭蛮の身体を貫き、伸びきっていた柄を縮めて穂先を鞘に納める。
「さて、屋上に……」
ベルトに着けているポシェットに虎翼を戻して、蒼月君達を追いたかったものの、怪我している子供やお年寄り、騒々しく喚く人達を放っておけず、私はショッピングモールの外へと彼らを連れ出していく。
獣の槍の力を見たかったけど。
今回はお預けになりそうね。それに、さっき擦れ違ったときに感じた気配は本家の人達が危惧する通り、マジで背筋に冷や汗が伝う程の威圧感を放っていた。
「姉ちゃん!無事だったんだな!」
「ハハハ、あんなのに負けるわけないでしょうが」
ペチペチと蒼月君の額を叩く。
「君も無事で良かったよ」
そう言ってあげるとまた安心したように蒼月君は笑い、私を見つめて首を傾げるとらの姿にも「助かったよ、ありがとうね」と伝えると「ケッ。儂の餌を横取りしようとしやがるからだ!」なんて蒼月君の頭の上でふん反り反ってしまった。
「とらが見えるのか?」
「そりゃあ、くっきりと見えるさ。私は蒼月君ととらの事を確かめるためにやって来たからね。けど、彼女を無事に送り届けたらまた話そうか」
「えっ、ちょっと!?」
私の事を追いかけようとする蒼月君に「今度、お寺に挨拶に行くから」と背中を向けたまま軽く手を振り、人混みの中を歩いて彼らから離れる。
「(強くなりそうな男の子だったけど。私は禁書庫の中を詳しく見ていないのよね)」
これから本家に戻るまで四日は掛かるし、宿泊ホテルに預けていた荷物を纏めるなり、課題の続きをやっていたほうが楽しそうね。
「うしおととら、どうなるのか楽しみだね」