太陽と共にか。だが、もはや叶わぬぞ。
どういう意味?と問い掛けようとしたその時、私の隣に立っていた蒼月君の身体を渦巻くように禍々しく憎悪に満ちた妖気が溢れ、あの時と同じように彼の魂は獣の槍に呑み込まれ掛けている。
「ぐっ、ち、ちくしょう!獣の…槍よ、まだ待ってくれ!まだ白面との戦いが終わってねえんだ!」
「うしお!うしおっ!!オイ、おまえら儂を強くするって言っていたろ!今すぐしろ!ちくしょうっ、またあのくそったれな獣になっちまう気か!」
『お前はもう強い』
「あァ?!それだけかよ」
『自覚していないのか。お前は特別だ』
『獣の槍をふるった同じ人でありながら、どうしてお前だけ石にならなかった』『何故、我らと同じように石にならずに一年生きてきた』『また、お前は何故』
『白面を憎むあまり、こうなっていない』
その姿は、まるで白面の者のようだ。
でも、その言葉とやり取りであることを思い出した。
いや、ほとんど聞き齧った程度だけど、井上と中村のお嬢さん、他にも沢山の女の子が櫛を使って蒼月君の事を助けたって流君達が教えてくれた。
「蒼月君、大丈夫よ。おいで」
「おッ、お妙さん…!あぶねぇよ!」
「私に任せなさい」
蛮竜を地面に突き立てて、ジーンズのポケットに仕舞っていたしとりお婆様の櫛を取り出す。何に使うのか分からず、ずっと不思議に思っていたけど。
このときのために用意してくれていたんだ。
ゆっくりと蒼月君の事を抱き締めて、彼の髪の毛に櫛を潜らせて解く。妖気の流れが僅かに戻り、まだ辛うじて戦える程度の状態に蒼月君の身体は戻る。
───けれど、これは私一人分の猶予だ。
面白し。我を滅ぼす筈の獣の槍が我を生み出しているとは。だが、我が多く在る必要なし!
『我らもお前達のような者に出会えていればな』
「字伏っ、まだ行くな!」
「オイ!まだ話は終わってねえぞ!!」
とらと蒼月君の叫びに応えず、とらの身体に絡み付き、鎧となっていた字伏は白面の者に向かって突撃し、その身と命と引き換えに白面の者の尾を破壊した。
おのれぇ…!尾を、身体を!!
怒りのままに唸る白面の者に向かって私は力任せに蛮竜を放り投げ、間一髪の間合いで弾かれた蛮竜を呼び寄せ、しっかりと白面の者を見据える。
糸色、貴様あ……!
「頭上注意よ、白面」
「おおおおおおおおおっ!!!」
グンと右拳を弓なりに引き絞ったとらの剛拳が白面の者の脳天を殴り抜き、続け様にとらの背中に乗っていた蒼月君の握り締めた獣の槍が白面の者の背中を切り裂き、紫色の血潮が噴き出す。