「死んだかなあぁああぁっ!?」
「蒼月君、覗き込んだら危な…あちゃあ」
私が危ないから止めるように言おうとした瞬間、蒼月君の身体に数珠が巻き付き、彼の身体を高台の下へと引きずり込み、虎翼の柄を縮めて小刀の状態に変えて鞘に納め、柵と手摺を踏み台に飛び降りる。
「とら、行くわよ!」
「うしおーっ、死んだら喰えねえだろうが!」
「そう思うなら、行ってきなさい!」
「こんの馬鹿力がァーーーっ!!」
バキバキと木の枝を折りながら暗い林の間を下に向かって突き抜けていく最中、一つ下の高台の広場──その街灯の下で戦う蒼月君と凶羅の姿を見つけ、蒼月君を喰うと叫ぶとらの腕を掴み、放り投げる。
そのまま木の幹を蹴り、地面に着地する。
獣の槍と渡り合える独鈷を握り締めた拳が蒼月君の顔を殴り、その巌のように鍛え上げられた足から繰り出された蹴りがとらの腹にめり込み、直ぐに二人の元に駆け付けようとした刹那、私の足元に錫杖が突き刺さる。
「強羅、貴方さっきからどういうつもりなの?私に情報を渡したり妨害したり、一体何がしたいのか全く分からないんだけど」
「一度お前に負けたオレには光覇明宗最強のオジキに鍛えられた矜持がある。今一度の再戦をお前に申し込みたい。喧嘩しようぜ、糸色妙さんよォ…!」
「……はあ、男ってどうしてメンツやプライドを気にするのよ。負けたら負けた、悔しいから再戦したい気持ちは分かるけど。今じゃなくても良いじゃない」
「いいや、今だ!光覇明宗の僧正・和羅が一子、強羅の名に懸けて二度の敗北はオレが許さねえ!」
そう言って錫杖を槍のように構える強羅。その後ろで蒼月君ととらが、彼がオジキと呼ぶ凶羅と死ぬかも知れない法力を受け、激闘を繰り広げている。
「分かったわよ、全く」
渋々とジャンパーを脱いで右手を横に突き出した瞬間、蛮竜が青白い雷撃を纏って飛来し、私はその柄を握り締めるように受け止め、上段に穂先を上げて構える。
「単独滅殺封印・孤月…!」
烈帛の気合いの乗った声と共に弾き出された無数の法力の月を切り裂き、手足や頬、胴を刻まれるのも無視して突撃し、力任せに蛮竜を振り下ろす。
「試製法力返しの風の傷ッ!!」
───刹那、鈍い音が響き渡り、地面を焦がす程に熱い風が蛮竜から吹き荒れ、強羅の纏う法衣を切り裂き、焼き焦がして吹き飛ばす。
風の傷。
妖気と妖気の衝突する場所を見極めて放つ技だけど。法力と蛮竜の妖気を衝突する刹那を見極めれば意外と出来るものね。
「ちっ、くしょお…!」
「仕方ないわねもう。三度目も受けてあげるわ」
「……はっ、はは、言質取ったぜぇ……」
そう強羅に言い残して凶羅に視線を向けると、僅かに気迫が薄れた瞬間を蒼月君に攻められ、吹き飛ばされていた。苦戦の末の勝利だけど。
おめでとう、蒼月君。
【概要用語解説】
本作の単語や転生者、その親族を解説します。
【
本名「緋村妙」。繋ぎ読みは「
年齢は22歳。身長167cm。
「さよなら絶望先生」および「るろうに剣心」に登場するニ家の血筋を受け継ぎ、生誕した現地人。自他共に認める天才。高校生の頃に糸色本家の当主を襲名し、圧倒的な強さと才覚を示し、当主の証「蛮竜」を賜った。
禁忌の一族。白面の者の執着する血筋。様々な畏敬の呼び名を持つ家系ゆえに物事を見極めるために俗世と関わることを極端に嫌い、婿になろうとする分家の指示を受け、嫌味や小言を常日頃から言われていた。
好物は缶コーヒー。