人里を離れた山奥。
古びた日本家屋をそのまま利用しているのか、随分とレトロチックな家の中を見回す蒼月君の隣に正座し、緩やかに開いた襖の先に視線を向ける。
ボディコンやタンクトップにジーンズだった先程の姿と違って、和服を身につけた二人のお辞儀に応えて私も指をついてお辞儀を返す。
「あなた様方に我らの兄弟、十郎を殺してほしい」
その言葉を真剣な表情で言い切った人の姿に化けている二人の片割れ──男の妖怪を静かに睨み付ける。妖怪だからとかそういうことを抜きにして、ハッキリと言えるのは子供に頼むことじゃない。
「バカ野郎!そんなこと頼まれたってするかよっ、オレは殺し屋じゃねえんだぞ!とら、お妙さん、もう行こうぜ!」
「お待ち下さい!あなた様方にはどうしても十郎を殺し、アレの凶行を止めて頂きたいのです。どうか、平にお願い申し上げます」
「その十郎という妖怪は兄弟の貴方達より強いのね」
また頭を下げる兄弟にそう問い掛ける。
「はい。十郎兄さんの鎌は身体中にあり、我ら三兄弟の中で二番を走るだけあって、天を駆ける妖馬『炎蹄』に劣らぬ走力を誇ります」
「ホウ。あの炎蹄に引けを取らねえか、面白そうじゃねえかよ。うしお、今回のヤツは今までのヤツより強いかもしれねえぜ」
「だからこそ、人を襲い始めた十郎を止めるにはその命を絶つ以外、もはや方法はありません。今一度、お願い申し上げます。獣の槍、蛮竜、その妖怪を滅する霊槍のお力をお貸し下さい」
そう言うとまた頭を下げる兄弟に蒼月君は「……分かった。でも兄弟なら殺す殺さないなんて言うのはやめてくれよ、大事な家族なんだからさ」と応えた。
鎌鼬の妖怪、それも炎蹄に迫る速さを持っている。
なんだかウチの家系図にも似たような話があったような気がするわね。
特に「この世界の分岐点」と言われる明治時代。
正しく激動の時代に産まれた糸色家の女性・糸色景こそが、糸色家が予言の一族と呼ばれる発端であり、その実兄・糸色姿の事の伝記を思い出す。妖怪やホムンクルス、
なぜか女だったとか子供を産んだとか言う日記もあったけど。本条家の秘密って、私には早いからとまだ教えて貰えていないのやよね。
私って糸色本家の当主なんだけど。
そう色々と考えていた刹那、鋭い殺気を浴びる。
「とら!」
「指図すんなよっ、女ッ!」
悪態を吐きながらも私の呼び掛けに応えてくれたとらは蒼月君と兄弟を庇うように大きな身体を広げ、私は虎翼を振り抜いて壁を切り裂いて現れた鎌を受け止める。
「無駄だ。
───だが、鎌の切れ味は想像していた物よりも鋭く虎翼の柄を切り落とされ、ジャンパーとシャツ、僅かに薄皮を斬られる程度に傷を抑える。
成る程、確かにこの鎌鼬は強いわね。