「カァッ!!」
「くくくっ。無駄だ、いくら鋭く疾い鎌を振るおうと貴様らの攻撃は儂の傀儡の核には届かない。さあ、儂の物となれ、糸色妙」
「シンプルに気持ち悪いわァ!!」
私の霊気と蛮竜の妖気を衝突させて作り出した風の傷を防ぐ強力な結界に舌打ちをして、とらの背に乗った蒼月君が結界の障壁を突き破り、奈落の身体に傷を付けるけれど。致命傷には程遠く、奈落の核には届いていない。
やっぱり、奈落の対する決め手が少ない。
私にも
────だけど、今は迷っている場合じゃない。
「五人とも左右に跳んで!」
私の叫び声に促されるように左右の木々の間に跳び、私と奈落の間に何も隔てるものが無くなったことを確認し、ジリジリと迫り来る奈落を睨み付けたまま、野球選手がバットを構ええ腰を捻るように蛮竜を担ぎ上げる。
ドクンッ……!
蛮竜の大きな鼓動が響くと同時に刀身は月光を反射し、無数の煌めきと輝きを放つ金剛石の大鉾に変異し、いつも以上の重さに足が地面にめり込む。
「バカな、金剛槍破だと!?戦骨と宝仙鬼は出会ってすら居なかったはず、いや、ヤツには息子がッ」
「金剛ォ……槍破ッ!!!」
私の振りかぶった金剛石の蛮竜はダイヤモンドの槍を何百本と放ち、奈落の結界を貫いて土くれの身体を貫き、完全に奈落の傀儡の核を破壊した。
「……おのれ、またし……」
そして、言葉を言い切る前に十郎君と蒼月君の攻撃が奈落の頭部を破壊し、今度こそ奈落の傀儡は邪気も妖気も発することはなくなった。
「ありがとう。みんな、助けてくれて」
「女の人にあんなことを言うヤツはダメだ!」
「おう。お前は儂の家来だからな!そ人を喰らうヤツもいるが、あんな助平な妖怪が偉そうにのさばってるなんざ儂は許さんぞ」
そう言って笑う蒼月君ととらの二人から視線を移し、十郎君に私達の視線が集まる。このまま戦いを再開することは出来るけど、もう私達が戦う意味はない。
「ねえ、良かったら私の屋敷に来ない?」
「人間の家にだと?」
「ウチの実家、昔は信州や信濃国と呼ばれていた長野県にあるんだけど。森も山も昔のまま残っている場所があってさ、もしも貴方達が良かったら来て欲しい。そこなら三人で暮らしていけると思うから」
私は三人に向かって出来る得る最大限の提案と可能性を提示し、大鉾を振るうために必要な両手の指を広げて、そう提案を伝える。
「…………十郎、彼女の言葉を信じよう」
「十郎兄さん、お願い。もうやめましょう」
「雷信兄さん、かがりまで……」
雷信君とかがりさんの説得に揺らぐ十郎君は悩みながらも蒼月君に視線を向けた瞬間、何かを思い出すように穏やかに笑みを浮かべた。
「わかった、信じてやる」
「十郎、良かったなあ!」
「けっ。今回は土くれと戦うだけかよ」
「とらには後でお肉をプレゼントするから、ね?」
そう言うと「じゃあ、わぎゅーってヤツをまた塊でくれよ」と言うので手配することを約束し、私の近くに隠れて控えている本家の使いに今回の詳細を伝える。