かがりさん達の暮らす山と住みやすい家を手配するまで、立て続けに起こった妖怪との戦いで疲弊した身体を休めるため、暫くの間だけ私と蒼月君ととらの三人は鎌鼬の住まう屋敷に泊まることになった。
「天然の露天風呂っていうのも良いわね」
猿や熊も入りに来るほどに良い湯だ。
凶羅に受けた顔の傷も十郎君に受けた傷も完治し掛けているけど。こうして湯治に務めるのも中々に良いことなのかもしれない。
「蒼月君、そっちの湯加減はどう?」
「うえっ!?い、いいと思う!!」
「なんでぇ、うしお顔が蛸みてえになってるぞ」
「な、なってねえよ!!」
ちょうど露天風呂の真ん中に聳える大岩の向こう側に響く蒼月君ととらのやり取りを聞きつつ、頭の上に乗せていたタオルを額に下ろし、夜空を見上げる。
金剛石の蛮竜。
アレを戦闘に用いて戦ったのは今回が初めてだけど。おそらく分家の送り込んできた監視役は金剛石の槍を回収し、幾つか持ち帰っている。
金剛石、ダイヤモンドは1カラットでさえも高価な宝石のひとつなだけあり、分家や本家の連中は強引に使わせようとしてくることもあった。
「本当に、嫌になるわね」
光覇明宗の僧侶の私を吟味する視線も好きにはなれないけど。こっそりと私の事を覗き見する視線も気になって仕方ないわね。
「強羅、隠れるなら気配ぐらい隠しなさい」
そう言って立ち上がると背中を向けて笠を深く被って念仏を唱え続けている強羅がいた。顔も耳も真っ赤に染まって、私の方を見ようともしない。
この前は強気に攻めてきたのに変なヤツね。
タオルを身体に巻いて、屋敷の方に向かって歩き出す。靴の中が濡れないようにしっかりと水気を拭き、屋敷に帰ると十郎君と雷信君が弾けるように飛び出していった。
一体、どうしたっていうのよ。
「お、お妙さん、何故その様な格好で?」
「いつもなら女中が着替えを持ってくるけど。流石に人知れない露天だと勝手が分からなかったのよ」
「……糸色の家系でしたね、お着替えを手伝います」
どこか呆れた溜め息を吐くかがりさんに首を傾げながらも髪の毛の水気を拭いてもらい、その間に身体を拭いて新しい服に着替えを終える。
「良いですか。お妙さん、普通の人間の女であれば素肌を晒すことを戸惑うはずです」
「……ああ、そういうことね」
ようやく男の人が逃げた理由を理解し、とりあえず全員の記憶を消すために蛮竜を構えて出ていこうとしたら落ち込んだ様子の蒼月君が帰ってきた。
「うしおのヤツ、お前とは別の女の風呂を覗いちまったって落ち込んでやがるのよ」
私の後に誰か入って、鉢合わせてしまったのね。