蒼月君は珍しく妖怪の本を買って、とらと一緒に本を読んでいる間、私は昨晩の出来事を除けば三度目の再開になる強羅とバス停のベンチに座って缶コーヒーを飲み、静かに黙ったまま横並びになっている。
「……昨日は、すまなかった」
「何に対して謝ってるのかは知らないけど。謝るなら相手の顔を見て謝って貰える?」
「クッ、偶然とはいえ風呂を覗いて悪かった」
自分の顔を覆い隠して謝罪する強羅。確かに覗かれたと言えば覗かれたのかも知れないけど。私はあまり気にしていない。そもそも覗かれて困る様な鍛え方はしていないと自負している。
「で、今回の用件は何かしら?」
コツンとまだ開けていない缶コーヒーを強羅の隣に置き、蒼月君ととらに視線を向けると女の古を抱き締めているのが見えた。中村のお嬢さんが知ったら大変な事になりそうな光景ね。
そう思いながらプルタブに指を引っ掛け、徐に缶コーヒーのフタを開けた強羅は「今回、お前は蒼月と長飛丸の戦いに割り込まないでくれ」と言ってきた。
二度も私を狙った癖に良く言えるわよね。
「不都合でもあるの?」
「今回は蒼月の将来に関わることだ」
「良いわよ、信じてあげる」
「敵の言葉だぞ、良いのか?」
「少なくとも嘘は言っていないからね」
缶コーヒーの中身を飲み干して、空になった空き缶をゴミ箱に入れて蒼月君ととらに「彼と戦ってくるから先に行っててくれる?あとでその子の家に追いかけるから」と伝えて、強羅に向き直る。
私の言葉に笑みを深めて独鈷を構える。
蒼月君のお家で仕掛けてきた不意打ち以外は正々堂々と真っ直ぐに勝負を仕掛けてきた男だ。他の光覇明宗の僧侶よりも信頼できる。
「気を付けろよ、お妙さんも女の人なんだからさ」
「……ハハハ、蒼月君は本当に優しいね」
「うしおーっ、早く行ってメシにしろ!」
私が自分よりも強いと知っているのに心配してくれる蒼月君の言葉にビックリしたものの、やっぱり見た目や地位じゃなく純粋に私の事を案じてくれる彼の優しさはとても好ましく嬉しく思う。
「嬉しそうだな」
「まあね、心配して貰えるのは嬉しいよ」
強羅の問いかけに素直に答えると蒼月君ととらを見送り、私は人目を避けるために商店街の店舗の間の路地に入り、虎翼の代用として選んだ一文字槍を構える。
「こんな狭い路地だ。突き以外に無理だろう」
「生憎、突きの速さは鎌鼬より速いわよ」
「なら、試すまでだ!」
彼の指摘に挑発めいた言葉を送った瞬間、独鈷を投擲してきた強羅の独鈷を一呼吸の間にすべて突き穿ち、地面に払い落とす。
「掛かってらっしゃい、最強が相手してあげる」
そう言って私は強羅に手招きをする。