【完結】風薫る日陰に寄り添う妙花   作:SUN'S

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巡る刻の出会い 急

翌日、午後を過ぎた頃。

 

蛮竜を担いでお寺の正門を抜けて本堂ではなく母屋の方に顔を向けると騒々しく口論を繰り広げる蒼月君ととらを見つけ、本当に仲良くなるのかと笑ってしまう。

 

「とらぁ!!」

 

「うるっせー!儂は悪くねえ!!」

 

蒼月君に怒りのままに雷を放とうとするとらの目の前に蛮竜を投げつけ、彼の動きを止める。ぶつかった事に怒鳴り掛けていたとらの顔が引き釣り、叫んだ

 

「げぇっ!?蛮竜ッ!!」

 

彼は勢い良く飛び退き、蛮竜を睨む。

 

そこまで嫌っているのは予想外だったかな。

 

「や、昨日ぶりだね」

 

「あのときの姉ちゃん、本当に来たのか!」

 

伸びていた妖気の髪が抜け落ち、獣の槍を肩に担いで私に駆け寄ってきた蒼月君に「はいこれ。メロンと加神町で買ったお菓子」と持参していたお土産を見せ、チラリととらにも視線を移す。

 

「とら、お肉のお土産もあるわよ」

 

「人間か!」

 

「高級和牛のブロックよ」

 

「牛なんぞ喰っても美味くねえぞ?」

 

そう言って困惑するとら。

 

ああ、そういえば昔は農業用として飼育することはあれど牛肉を食べるのは禁じられていたっけ。それにしても、そういう話題って妖怪にも通じるのね。

 

「じゃあ、蒼月君が食べる?」

 

「貰う!」

 

「ハハハ、流石は男の子だね!」

 

ワシャワシャと短髪に切り揃えてある頭を撫でながら蒼月君に案内して貰い、蛮竜の穂先を袋鞘に納めて母屋の玄関を潜り抜けた瞬間、強烈な威圧を受けた。

 

まあ、父親なら警戒するのは当たり前だな。

 

「くぉらっ!潮、真っ昼間に女の子を連れ込むとはそれでも寺の息子か!?」

 

「そういうのじゃねえよ!!」

 

いきなり始まった家電の飛び交う親子喧嘩の光景にビックリしながら、とらを見上げると「ケッ。いつもの事だよ、アホらしい」と部屋を出ていってしまった。

 

「ったく。変な勘違いしやがって」

 

「まあ、親はそういうものよ」

 

台所の見える居間に通される。

 

私の真向かいに座った蒼月君に「昨日、姉ちゃんはオレととらの事を確かめるために来たって言ってたけどさ。アレ、どういう意味なんだ?」と率直に聞いてきた。

 

「まあ、その話をする前に先ずは自己紹介しておこうか。私は糸色妙(いとしき たえ)、気軽にお妙さんか妙ちゃんって呼んでくれても良いよ、蒼月君」

 

更に付け加えるように「釣糸の『糸』に景色の『色』、それから絶妙の『妙』ね」と名前の読みや漢字を教えてあげると首を傾げた。

 

流石にちょっと気づき掛けているね。

 

「じゃあ、お妙さんて呼ぶ」

 

「それじゃあ、君ととらに会いに来た理由だったね。難しくなるし、簡単に纏めると私の二か三代目くらい前に未来を視る不思議な力を持つ人がいてね、その人が君達の事を描いていたから確かめに来たんだ」

 

「え、えと……ん?糸色って、あの糸色!?」

 

「おっ。聡いね、蒼月君」

 

「『うしおととら』ならウチの倉に半分ぐらいバラバラで虫食いまみれの千切れたボロボロのヤツだけど、一冊だけ本が残ってるよ!!」

 

「───流石に本家ほど保存は宜しく無かったわけか。まあ、それでも会いに来た理由はもう一つあるんだ。蒼月君の獣の槍と私の蛮竜は500年前の戦国時代で会っているんだ」

 

「500年前ってとらが獣の槍に刺されたとき?」

 

蒼月君の言葉に頷く。

 

「古今東西、妖気や霊気を帯びた(バケモノ)器物は幾つも存在するけど。現存する妖器物、特に槍や鉾など長柄類は総じて『獣の槍』の名前を冠する。───けれど。その獣の槍の中で唯一の例外、光覇明宗の僧侶や妖怪の恐れる槍はたった一本だけ、それが『獣の槍』だ」

 

「じゃあ、そのばんりゅうってのも?」

 

「私の蛮竜は大鉾、序列は獣の槍と同じく最上大業物の一振り。ちなみに遣い手を選り好みする面倒臭いタイプだから、今のところ私にしか使えないよ」

 

そう言って私は床に置いた蛮竜を持ち上げ、その穂先を蒼月君に見せてあげる。とらはいい加減に警戒するのを止めてくれないかな?

 

 

 

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