【完結】風薫る日陰に寄り添う妙花   作:SUN'S

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鷹取の檻 急

「グッ…捕まえたぜ!」

 

私の突き出す槍を脇腹が裂けることも気にせず、捕まえたと宣う強羅は念仏を唱え始めたかと思った次の瞬間、上半身の筋肉が盛り上がっていき、法衣が弾け飛ぶ。

 

「あら、意外と着痩せするタイプだったのね」

 

「不動金剛力、身体の中に法力を蓄えて爆発的に筋力を強める方術だ!!コイツなら怪力ゴリラのお前でも簡単に槍を引き抜くことは出来ねえぞッ!!」

 

「怪力ゴリラって随分と酷いことを言うじゃないの。けど、糸色の事を知っているなら槍や鉾を使うだけが取り柄じゃないって知っているでしょうに」

 

パッと槍の柄を握り締めていた両手を離すと同時に強羅の間合まで一足で踏み込み、熊手に構えた左右の拳を連続で強羅の身体に叩き込んでいく。

 

二重の極み「連ね撃ち」。

 

刹那の瞬間に二度の拳打を打ち込むことで相手の身体に破壊の衝撃を撃つ糸色家の家伝秘伝であり、その衝撃を海外で有名になり始めているガンマナイフの様に様々な角度や位置から叩きつける。

 

わりと気に入っている応用技の一つだけど。

 

「ぐっ、ぶおぉあっ!!?ま゛ッ、まげるがぁ!」

 

丸太のように太くなった右腕を狭い路地で振り抜く強羅の正拳を逸らすように彼の手首に手のひらを添えて、がら空きの顎先に軽く裏拳を放った瞬間、カクンっ……!と強羅の身体が地面に倒れた。

 

そのままゆっくりと強羅の背中に座る。

 

「強羅も強いとは思うけど。パワーに頼りすぎてテクニックが疎かになっているんじゃない?」

 

「…う、うるせぇーっ、さっさと退け…」

 

「まあ、余計な事を言うなら貴方は独鈷より長物を使っている方が強いように感じるわよ?試しに槍か薙刀でも使ってみたら?」

 

「オレは強羅だッ、この独鈷と拳でお前に勝つ!」

 

そう言って私を見上げる目には怒りや殺意ではなく燦々と輝く私を超えるという意志だけが映り、思わずクスリと笑ってしまった。

 

「期待しているよ、強羅」

 

ひょっとしたら私に勝てるかもねと言い残して、彼の悔しがる姿を見ないために槍を拾い上げ、路地を出ていくと山の上に見えていた屋敷が爆ぜた。

 

あそこに蒼月君ととらはいるのか。

 

二人に追いかける前に自動販売機で缶コーヒーとジュースを買い、のんびりと歩きながら見事に壊れた山の上の屋敷を眺めていると視界の端に僧侶が映り込んできた。

 

折角、気分が良いのに最悪だね。

 

「糸色様、どうか鉾を納めて戴きたい。我らの目的はあくまで獣の槍、あなた様と事を構える気はないのです」

 

「そういう割に監視役も方術を使えるヤツを周囲に忍ばせているじゃない。まあ、その程度の方術じゃ私を捕らえることは不可能だけど」

 

私は遠回しに蛮竜を差し出すように話してきた光覇明宗の僧侶の言葉を無視して、蒼月君ととらの待っている山の上に向かって走り出す。

 

 

 

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