百を超える妖怪の群れに突撃し、粉微塵に粉砕し、切り裂き、穿ち、砕き、消滅させる。私に悲鳴を上げて逃げ惑う妖怪に何だか申し訳ない気持ちになる。
しかし、無関係の人間を巻き込んだ報いは受けるべきだ。蒼月君と獣の槍を狙っているようだけど、蒼月君ととらに追い付くまでに数は確実に減らす。
「貴様、また性懲りもなく現れたか!!」
「一鬼様じゃあ!」
「一鬼様が来てくれたぞ!」
「ひとつき、ねえ?」
緑色の肌に一本の角を額の真ん中に生やしたとらよりも体躯の大きい妖怪の事を見上げる。けど、また性懲りもなく現れたという言葉には語弊がある。
あくまで彼らに恐怖を刻み込んだのは戦骨という人間であり、私は降り掛かる火の粉を蹴散らし、私の邪魔をする妖怪を倒しているだけだ。
仲良くできるなら良いことなんだろうけど。
彼らは私の命を狙ってきた。
相応の覚悟を持たなければいけない。
「てめえが戦骨の子孫か何かか知らねえが、その忌々しい大鉾を振るうヤツは蒼月潮と獣の槍と同じように粉々に砕いてやる!」
「生憎、私のご先祖様に戦骨なんて人はいないわ」
分厚く大きな拳を振り下ろしてきた「ひとつき」という妖怪のパンチを二重の極みで迎え撃ち、拳の骨を粉々に殴り砕き、骨の砕けた痛みに苦悶の呻き声を上げる彼を見上げるように見据える。
「私には糸色妙っていう名前があるのよ!」
そう言って「ひとつき」を睨み付けたとき、私と彼を取り囲んでいた妖怪達がざわめき始め、何かを確かめるように話し合う声が聴こえてくる。
「いとしきだとぉ?まさか、そいつはあ糸巻きに色付くと書く名かあ?」
「(うわあっ、すごいマッチョな河童がいる。いや、妖怪なんだから筋肉質なヤツもいるわよね)……そうだけど。文句でもあるの?」
「おお、懐かしいなあ、スネコスリに会ってくれえ…」
すねこすり?と河童の言葉に首を傾げた刹那、猫にもタヌキにも犬にも見える生き物が物凄い速さで私の胸の中に飛び込んできた。
フサフサの毛並みと懐かしい匂いがする。
「……しとりお婆様の匂い?」
「「「おおおおおおおおおおぉっ!!!」」」
「うるさい。黙りなさい」
思わず、そう呟いてしまった瞬間、大歓声のごとき雄叫びが妖怪達から響き、ビックリしながら蛮竜を構えると一瞬で妖怪の雄叫びは止まった。
ずんずんと私に近づいてきたマッチョな河童は嬉しそうに笑い、私に古びた櫛のようなものを差し出してきた。妖気は纏っておらず、むしろ清浄な気配を感じる。
「嬢ちゃんの忘れもんだあ…返したぞお……」
「えっ、ちょっとこの子は!?」
「親分を宜しく頼むぞお……」
えぇ、どうしろって言うのよ?