今回の件に私は深く関わることはなかった。
雷信君や十郎君、かがりさんの加勢によって蒼月君は無事に妖怪を取り仕切っている妖怪の長と出会い、話し合うことが出来たそうだけど。
私は親分と呼ばれていた猫にもタヌキにも犬にも見える生き物と戯れていただけで、蒼月君ととらを手助けすることは何も出来なかった。
「……親分君はしとりお婆様のお友達だったの?」
そう私の膝の上に丸まっている親分君の背中を優しく撫でて問いかけると静かに私を見上げ、ペロリと私の手を優しく舐めた。私から三つか四つ前、ちょうど明治時代に生きていた糸色家の女性だ。
正式な名前は
彼女は様々な物事に興味を示しながら「サガラ・トレーディング・カンパニー」という明治時代に渡米し、日本の交易業の大半を担った相楽左之助の二人娘の長女であり、糸色家の勢力拡大の一端を担っていた。
蛮竜は使わなかったらしいけど、糸色景と同じように神通力を使えたという話や日本の危機を救った、北海道で秘密裏に行われていた金塊争奪戦に参加していたなんていう噂もある不思議な女性だ。
しかも百歳を越えて今も尚健在である。
多分、あの人だけが蛮竜も二重の極みも使える私を普通の女の子として扱ってくれた。まあ、あの人はバトルセンスはあるのに善悪を問わずに全てを包み込んでしまう大空のように穏やかで温かい人だ。
「お妙さん、やっと見つけた!」
「蒼月君、無事だったのね」
「うん。マッチョな河童が助けてくれてさ」
「そ、そう、良かったね」
あのマッチョな河童よね?と私の出会った河童の事を想像してみたものの。ひょっとしたら河童という種族は総じてマッチョな生き物なのかも知れないわね。
「ところで、その猫は?」
「アホうしお、そいつはスネコスリだ。生気を吸うヤツもいれば人を転ばせるヤツもいるが、こいつは人臭いから人に飼われてたヤツだな」
「それなら私のお婆様の子かな?」
「へえ、そういう妖怪もいるんだな」
蒼月君は目線を合わせるようにしゃがみ、親分君も蒼月君に視線を向けた瞬間、ペチンと彼の額に肉球を押し付け、むにむにと蒼月君の顔を踏み踏みし始める。
「ぷっ、ははははははっ!!擽ったいなあ!」
「儂もやってやるよっ!」
「どわあっ!?殺す気かとらっ!」
「儂はお前を喰うために取り憑いてんだぜ?」
そう言うととらは蒼月君の事を追いかけ、蒼月君も怒って獣の槍の柄の部分を叩きつけて、応戦してじゃれ合いを始めている。
「親分君、君はしとりお婆様に会いたい?」
そう問いかけると僅かに首を持ち上げた親分君はくるりと身体を回転させ、ふわりと風に乗り込むように跳び、小さく鳴き声を発して森の奥に行ってしまった。
ああ、そういうことか。
親分だからみんなに頼られているんだね。