蒼月君ととらの喧嘩を見ていた私を含めて車に乗せてくれた片山君と香上君の二人にお礼を言った瞬間、蒼月君のお父さんに渡されたお金がグローブボックスから飛び出し、思わず深い溜め息を吐いてしまったけど。
いきなり目の前に大金を目にしたら盗んでしまうのは普通の人なら当たり前なのかも知れない。糸色本家の当主でありながら自由に歩き回っている私が言ったところで無意味な事なのかも知れない。
「こ、この事はご内密に…!」
「出来心だったんです!」
そう言ってドライブインのフードコートでラーメンを啜っている二人の謝罪を聞きつつ、蒼月君もラーメンも啜りながら「お金を返してくれたし、北海道まで乗せてくれるなら許すよ」と言っている。
本当に君は優しくて良い子だと思うけど。悪い事をしたときはしっかりとダメだって教えてあげるのも優しさだよ。まあ、蒼月君が良いなら私も良いかな。
「ところで、ラーメンってどう食べるの?」
「どうって、こうやって啜るんだよ」
「お姉さん、まさかラーメン初心者なのか?」
「この御時世に珍しい~っ!」
「な、なによ、悪いの?」
フンと三人の言葉に顔を逸らして、三人を真似るように口にラーメンの麺を含むも上手く吸えず、仕方なく割り箸で掬うようにラーメンを口に入れる。
「……うん、醤油とバターって意外と合うのね」
「「「だよね!?」」」
私の言葉に我が事のように喜ぶ蒼月君と片山君と香上君の三人にビックリしながら、チャーシューという焼き豚をタレに漬けて煮込んだものを三人が視線をテレビに向ける間にとらにあげる。
「こりゃあ、牡丹か?うめえなぁ…」
「フフ、それは良かったわね」
二枚目のチャーシューもあげると美味しそうに食べるので、チャーシュー丼というものを食事券で購入し、直ぐに出てきたため誰にも見えていないとらは大きく口を開き、一口で頬張ってしまった。
「お妙さん、ラーメン伸びちゃうよ」
「伸びるの?」
「うん。えーっと、汁を吸って膨らむんだ」
「変わった食べ物なのね」
そう言って私は上手く啜れないラーメンを食べ終え、歯磨きをするためにお手洗い場を借り、スンスンと口許に手を当てて臭いを嗅ぐ。
ラーメンって臭いが残るのかと戸惑いつつ、うがいと歯磨きを丁寧にして四人の待つフードコートに戻ると蒼月君達は二杯目を食べ始めていた。
とらは私が頼んだ分のチャーシュー丼を一口で食べては新しいものを食べるということを繰り返し、なんだかすごいことになっていた。