片山君と香上君の車に乗せてもらい、妖怪に襲われることなく無事に青森県に入ったものの、フェリーに乗る時間を過ぎたため旅荘「大谷屋」で一泊することになり、蒼月君達とは別の部屋に泊まることになった。
「宿屋や民宿って初めてだわ」
「ウチの旅荘が初めてなんて嬉しいですね。男所帯に女の子が一人だと大変だったでしょう?お風呂は用意しているのでいつでもどうぞ」
「ハハハ、ありがとう。女将さん」
スポーツバッグと蛮竜を置いて、部屋の外に出ると女将さんの後ろに小さな女の子を見掛け、ヒラヒラと右手を振ってみると彼女も小さく手を振ってくれた。
挨拶を返せるなんて、とても良い子ね。
着替えを持ってお風呂のマークを描いた暖簾を潜り、脱衣所に入ってジャンパーとシャツを脱いだところで異変に気付き、仕込み槍を伸ばした瞬間、ボロボロに刃毀れした包丁が振り下ろされ、お風呂場に押し飛ばされる。
「ぐっ、なまはげの格好した妖怪が何のよう!?」
「若い女の皮、それも強い女の皮だァ…」
お風呂に入りたいのにタイミングの悪い妖怪がいるものね!と文句を言いつつ、なまはげの首を掴み、窓に向かって背負い投げをするように投げ飛ばす。
「……獣臭い…?…」
スンスンと手を嗅いで親分君とは違う、人の温もりを欠片も感じない嫌な気配と臭いを気持ち悪い気分になり、粉々に砕けて風通しの良くなった窓を眺める。
すでになまはげは居なくなり、どうしたのかと考えていたその時、上の階から悲鳴と妖怪の気配を感じ、着替えもせずに脱衣所を飛び出し、僅かに変化した見えた蒼月君の後を追う。
「なまはげ、詩織ちゃんを離せ!」
「なんだぁ!お前はぁっ?!」
「悪い子だよぉ!!」
蒼月君は獣の槍を突き出して攻撃を仕掛け、窓の外に逃げようとするなまはげを追おうとしたが、なまはげはしおりちゃんと呼ばれた女の子を放り投げた。
「落ちるなぁ!!」
「お前が落ちるっての、片山あっ!?」
「二人ともナイスよ!」
片山君が女の子を抱き締め、その片山君を香上君が掴んだところに私も抱きついて、しおりちゃんの事を部屋に引っ張り上げる。
「いっててぇ、えぇ!?」
「ぶ、無事だよなはあっ!?」
「どうかしたの?」
「「な、なんでもないでーす!!」」
そう言っているわりに私の事を見つめて……ああ、そういえばジャンパーとシャツを脱いだまま向かってきたから上は下着だけになっていたわね。
まあ、誰に見られても恥ずかしがるような恥ずかしい身体じゃないからいいけど。