なまはげの正体が猿だったことを蒼月君に聞き、妖怪変化の類いにしては杜撰な行動の理由にもある程度は納得したけど。子供を狙うヤツは何者だろうと許さない。
「……血痕が途切れてるわね」
「チッ。一杯食わされたか!うしおーっ!あの猿はガキを狙ってまだあの場所に居やがるぞ!」
「クソ!行くぞ、とらァ!」
蒼月君ととらの駆け出していく後を追おうとした刹那、身体を切り裂かれた猫を見つけ、傷は深いものの呼吸をしている。あまり使いたくないんだけど。
もう一つの糸色とも言える血筋。
糸色本家の中でも特異な能力を持つしとりお婆様の妹の血筋に当たり、彼女の子孫には極稀に人を癒やす能力を宿す子供が産まれる。
「頼むわよ」
「お任せを」
その妹の血筋に当たる監視役に猫を預け、私も蒼月君ととらを追い掛けていると車のエンジンを掛けている片山君と香上君の二人を見つけ、その後ろに飛び乗る。
「私も乗せて!!」
「おう!」
「うしおのところまでかっ飛ばすぞ!」
その掛け声と同時に最高速度で走り始めた車の屋根に立ち、蛮竜を呼び寄せ、蒼月君を見つけると同時に片山君が彼の事を掴み、屋根に押し上げる。
「お妙さん!にいちゃん達ッ、あのデカい場所にアイツは、詩織ちゃんを連れて行ったんだ!!そのまま突っ込んでくれ!」
「行くぞおぉお!!」
「やってやらぁ!!」
二人の叫び声が響くと同時に大量のガラス片が飛び散り、私と蒼月君はエスカレーターを駆け上がり、五階、十階、十二階を越えたところで猿を見つける。
「子供から手を離せっ!!」
「詩織ちゃんを返しやがれ!」
蛮竜と獣の槍の突きと横薙ぎを躱し、ガラスを突き破って外に飛び出す猿を追い、蒼月君は片足を貫かれ、エレベーターの中に蹴り飛ばされた。
「また、私の前で子供を傷付けたなァ…!!」
「ギィイッ!?」
しおりちゃんを抱き抱える猿に飛びかかり、包丁から錆びた鉈に持ち変えた猿の乱雑で杜撰な攻撃を弾き、蛮竜で身体を斬り付ける。
「オレは人間になるのを邪魔するなぁ!!」
「我欲に負けた猿が、吠えるなァッ!」
片腕を切り落とした刹那、エレベーターを通ってバイクが弾けるように飛び出し、猿の身体を建物の外に押し出していく。
「うしお!お妙ちゃん!」
「やっちまえ!」
「「ありがとう!!」」
片山君と香上君の二人の声援を受けながら、しおりちゃんを手放した猿に向かって蛮竜が斜めに身体を切り裂き、蒼月君の振るった獣の槍が猿の身体を穿ち、完全に消滅させてしまった。
「妖怪変化は沢山居るけど、お前は地獄に行け」
「お前は人間にはならないよ、絶対に」
私と蒼月君は消えゆく猿に最後の言葉を告げた。