フェリーに搭乗して、直ぐに私の体調は崩れた。
片山君と香上君の車の運転は良いんだろうけど、私は乗り物が基本的にダメな体質のため、磯の香りと肌寒さにふらつきながら甲板の椅子に身体を預けている。
「んッ…ふう……ゔっ…」
「お妙さん、大丈夫か?」
「ま、まあ、気持ち悪いけど。大丈夫だよ」
蒼月君の私を心配する声に返事を返して、酔い止め薬を飲んで溜め息をこぼす。缶コーヒーを飲みたい、普通のコーヒーでもいいけど。
何か口に含んでおきたい。
ぐったりとする私の上に座るとらに怒る蒼月君と、それに怒るとらの二人のやり取りを眺めているとギターケースを背負った女の子に声を掛ける片山君と香上君の二人も見え、元気が有り余っていて良いなと思う。
「……蒼月君、変わった気配がする」
「ああ、こりゃ妖怪の臭いだぜ」
気だるくて吐き気を催す身体を強引に起こし、ザワザワと騒がしくなってきた甲板の手すり側に移動し、濃霧の立ち込める視界の中に古びた船を見つける。
人の気配は一つもないけど。
ガコンと金属の軋む音と錆びた鉄の臭いが漂う最中、先程のギターケースの女の子と杖をついたおじいさんが勇雪丸と名を刻まれた船に乗り込んでいく。
「クソ!とら、行くぞ!」
「しょうがねえなあっ!!」
「────ッ。私は入れないわね」
二人を追い掛けようとしたが、強力な結界によって私は入ることを拒まれた。いや、私だけではなく蛮竜を警戒しているのか?
そう考えながら片山君と香上君の二人に支えて貰い、仰向けのまま甲板に叩き落とされる事はなかったものの、やはり手のひらに焼けるような痛みを感じる。
「お妙ちゃん、大丈夫かよ!?」
「酔い止め薬飲んだばっかりだったろ!」
「ありがとう、二人とも」
ゆっくりと身体を起こして吐き気と気持ち悪さを我慢しながら勇雪丸の事を見つめる。あれほどの巨大な船が見えていなかったなんて絶対にあり得ない。
何かしらの外的要因がある。
「……ごめん。ちょっとだけ休ませて」
「オレが運ぶよ!」
「いや、オレが運ぶから!」
フェリーの揺れに耐えきれず、口許を押さえながらそう二人にお願いすると自分が運ぶと口論を始めてしまい、どうしたものかと思っていたその時、金色の髪をオールバックにした男が私を横抱きに抱き上げ、テラスにある椅子まで運んでくれた。
「あ、ありがとう、ございます」
「こんくらい気にするなって、糸色妙さんよ」
「……貴方、光覇明宗の人間?それとも分家?」
「さてね。今回は下見に来ただけだ」
そう言うと彼は人混みに紛れてしまった。