【完結】風薫る日陰に寄り添う妙花   作:SUN'S

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百年先まで縁を結び 急

ビルや背の高い建物の少ない街を歩き、夜風と星を眺めていると暗がりで何かに攻撃を仕掛けているとらを見掛け、妖怪がいるのかと周囲を警戒する。

 

しかし、妖怪の気配はとらを除けば何もなかった。

 

とらの姿もいつの間にか消えているし、一体何がどうなっているのだろうかと後ろ腰に隠していた仕掛け槍を掴む手を離し、自動販売機の明かりに歩み寄る。

 

缶コーヒーを買い、取り出し口に手を入れた瞬間、背後に人の気配を感じ、通りすぎるのを待たずに缶コーヒーのプルタブに指を引っ掛けて飲み口を開ける。

 

「失礼。お嬢さん」

 

「お嬢さんって私の事?」

 

「えぇ、顔色が優れない様ですが」

 

いきなり話し掛けられた事に驚きつつ、後ろに振り返ると赤い目が私を射貫くように見つめてきた。……ッ、ほんの一瞬だけど、何者かに私の意識を持っていかれそうになった。

 

「馬鹿な、私の目が効かないのか?!」

 

「目って事は精神を支配する妖術なんだろうけど。お生憎様、そういう類いのものは受けていると耐性も付いちゃうものなのよ。残念だったわね!」

 

「クッ。やはりあの母娘にしておけべきだった!」

 

私に向かって上段の回し蹴りを放ってきた人なのか妖怪なのか分からない男の蹴りをガードして受け止める。が、想像以上の怪力の込められた蹴りに地面に削りながら踏ん張り、なんとか倒れることを拒む。

 

「(まだ腕が痺れてる。いや、それよりも親子って言ってたけど。アイツ、人を喰うタイプの妖怪か!)」

 

後ろ腰に隠していた槍を引き抜いて、塀に飛び乗って家屋の屋根に移り、周囲を見渡すととらが何かを追い掛けているのが見えた。

 

アッチに居るのか分からないけど。

 

あそこに行けば居る。その例えようのない確信を信じて屋根を飛び移っている途中、全身を黒い服に包んだ鏢が同じように屋根を伝っているのが見えた。

 

やっぱり、あの先にさっきの男はいる。

 

「おじさん!」

 

「糸色も来ていたのか?なら、お前はあの(バケモノ)を追え、私には寄るところがある!」

 

そう言うとオジサンは別方向に向かい、私は言われた通りにとらを追い掛けるとナース服の女の妖怪達ととらが戦っているのが見え、力任せに槍を放り投げる。

 

妖怪の一人を串刺しにする。

 

「とら、炎を!」

 

「家来の癖に儂に命令すんじゃねえっ!」

 

私の言葉に文句を言いながらも炎を吐き、私の槍ごとナース服の妖怪を焼き焦がし、私は少しだけ焦げた槍の柄を握ってとらの近くに着地する。

 

「で、どういう状況なの?」

 

「どうもこうもあるかよ。儂の獲物をコイツらが横取りしやがった!それだけで儂がコイツらを蹴散らすのに理由は十分なんだよおッ!!」

 

「確かに、横取りは悪いわね!」

 

そう言って私も槍を振るい、妖怪の身体を切り裂き、彼女達の抱えている母娘の姿に、さっきの妖怪の言葉を思い出して、思わず舌打ちをしてしまう。

 

しかも私の槍が効いていない。

 

それなら、北海道に置かれた武器を使う(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

槍よ、来い(・・・・・)っ!」

 

「槍?蛮竜じゃねえだと!?」

 

とらの悲鳴じみた声を無視し、私は飛来してきた牛角十文字槍の黒く塗り潰された柄を掴み、身体を捻って飛んできた衝撃を分散し、構える。

 

「銘は北落師門、その刃は抉り削ぐ…!」

 

タンと駆け出すと同時に穂先を回転させ、牛角十文字槍の刀身がドリルのようにナース服の妖怪の身体を刻み裂くように穿つ。

 

この技の名前は「八寸」───。

 

槍を捻る事で相手の身体を引き裂き、削ぎ、抉り、破壊して突き進む技であり、普通の人間に対して使うことは絶対に出来ない殺しの技だ。

 

「まだあんのかよ、そんな物騒な槍」

 

「あるわよ、糸色だもん♪︎」

 

クスリと笑って北落師門を肩に担いで笑う。

 

 

 




【概要用語解説】

本作に登場する単語や転生者、その親族に関する用語を少しずつ解説してきます。

【北落師門】

糸色本家の所有する霊槍。
糸色本家の当主の証「蛮竜」と同じく妖刀や霊槍に分類する(バケモノ)器物であり、北海道に居を構える糸色家の血筋を引く家に納めて奉っている。穂先は牛角十文字槍。柄は黒く塗り潰された漆塗り。

大業物の一工。

元ネタは「SAMURAI DEEPER KYO」。


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