吸血鬼と奈落を倒した翌日。
私は北海道にある糸色系列の経営する病院を鏢のおじさんに紹介し、とらの欲しがる食べ物を店舗ごと買い取る勢いでお金を払い、焼き鳥やケバブ、魚介類のお店も合わせて七つほど制覇したとらのお腹は真ん丸に膨らんでいた。
「ぷへえぇ~~っ。こんなに喰ったのは久々だぁ」
「フフ、良かったわね」
「おう。流石は儂の家来だ」
「とらじゃなくてブタだな」
「なんだとぉ!?儂のどこがブタだってんだ!」
「腹だよ、腹っ!」
ぶよんっとしたお腹を蒼月君に獣の槍で押され、自分のお腹の膨らみに漸く気が付いたとらは私に困ったような顔を向けてくるから「とらは妖怪だから直ぐに痩せると思うわよ?」と言えば安心したように、自信満々にふん反り返ってしまった。
その姿が可笑しくて可愛くて、思わずクスクスと笑いながら蒼月君ととらの事を眺めていたその時、視界の端に金髪をオールバックに整えた男を見つけた。
やっぱり、フェリーで私を助けてくれた人だ。
「や、あの時はありがとう」
「前にも言ったけど、気にするな。いくら本山が狙っててもオレは立てないぐらい弱ってる女の子を襲うほど野暮な男じゃない」
「そう。なら、やっぱり。ありがとうかな」
「ハハ、箱入りだな。下心があるかもよ?」
ギシッとプラスチック製の椅子を軋ませながら、ゆっくりと私の事を覗き込むように笑う金髪の男に「その時は返り討ちにしてあげるわよ」と言い、ペチンとおでこにデコピンを打つ。
「オレの名前は
「知っているでしょうけど、糸色妙よ」
軽く自己紹介を交わして、私は席を立つ。
「また、会いましょうね」
「そんときは敵だろうに」
「その時は手加減してあげようか?」
「要らないさ。こう見えてもオレは強いぜ」
ヒラヒラと手を振って秋葉流……うん、流君に背中を向けて蒼月君達のところに向かう。わざと隙を作っているのに、狙ってこないということ相当強いわね。
「(他の光覇明宗の僧侶もあれぐらい余裕を感じる態度と強さを持っていれば納得できるんだけど。蛮竜と獣の槍を狙う奴らは強羅と凶羅以外は小手先の技に頼りすぎている人ばかりだったもの)」
「あれ?お妙さん、何かあったの?」
「……フフ、それは秘密かな♪︎」
蒼月君の問いかけに口許に人差し指を添えて笑う。
後ろを見れば既に移動したのか。もう流君の姿は消えていたものの、なんだか面白く感じる彼の雰囲気はハッキリと覚えている。
次に会うときは戦う。ちょっと楽しみだな。