ナンパに失敗して拗ねた片山君と香上君の車に五人で乗っているものの、二人の視線は恨めしげに蒼月君に向いている。多分、私と伏戸歩に挟まれている蒼月君が羨ましいんだろう。
でも、私はいつもの如く車酔い中だ。
「ごめんねえ、蒼月君…」
「これくらい良いよ。それより大丈夫?」
「酔い止めは飲んでるから平気ぃ…」
ぐったりと蒼月君の頭に寄り掛かって別に運転は下手じゃないけど。なんだか運転してくれている片山君に申し訳無い気持ちになる。
私の父親も乗り物酔いは酷く車好きなのに運転できなくて残念がっていたけど。一体、どうやって運転免許証を取ることが出来たのかは未だに教えてくれない。
疚しいことはしていないのは知っているけど。
やっぱり娘としては気になるものだ。
「お妙ちゃん、本当に大丈夫なの?」
「うん。もう慣れてる」
「今夜、あたしと同室にする?」
「「するぅ!」」
「アンタらには聞いてないっての!全く」
やれやれと肩を竦める歩さんに「ありがとう。でも、少しだけやることがあるから」と言って、歩さんとの同室を丁重にお断りする。
「お妙さん、やることって?」
「北海道の親戚に連絡して、邪魔立てする奴らの足止めを頼むつもりだったんだけど。意外と私の行動を監視している親戚は多いみたいよ」
そう言って窓の外を指差す。
ちょうど赤信号だったこともあり、みんな窓の外を見るとスーツ姿の集団を見つけ、あからさまに頬を引き釣らせている。元々は敵対していた組織だったらしいけど。
しとりお婆様とその妹の説得と勧誘を受け、今は北海道の妖怪や幽霊、ホムンクルス、
ただ戦闘集団というより戦闘民族の様な武人タイプも多く彼らを顎で使おうとした分家の一つが僅かたった一夜で崩壊した噂も存在する。物理的、経済的、個人的、全てを破壊されたそうだ。
良い人も分家にはいるけど。
その倍以上に悪い人がいる。
「あのおっちゃん前にも見たことある!」
「凍座だよ、向こうの当主は凍座を名乗るんだ」
糸色本家は隠密や偵察、要人警護と遊撃を御庭番衆に任せる傍ら、武人気質の多い剣客兵器には世界各地の超常の存在と戦う仕事を頼み、少なくとも糸色家のここ百年の繁栄は二つの組織のおかげでもある。
攻守一体の双璧。
糸色当主の私にも二つの組織の長は忠義を誓っているけど。時代錯誤どころか時代劇でも中々見ないほど忠信すぎる二人だと思う。
あと私を見る目が何故かじっとりしている。