「人のズボンに何すんじゃボケェ!」
「いや、ぶつかってきたのは」
「喧しい!!」
流石は都会だね。
こんな昼間に喧嘩なんてするのかと缶コーヒーを飲むのを止めて、みかど公園の中に入っていくと如何にも悪い人というオジサンがメガネのお兄さんに絡んでいるのが見えた。
当たり屋の類いにして随分と柄の悪い。
「パパぁ!」
「へえ、そういうことするんだ」
まだ中身の入っている缶コーヒーを握り、女の子の身体を掴んでいる変態に向かってぶん投げると私の缶コーヒーは顔面に、投げナイフがオッサンの手の甲に突き刺さり、黒服の男が其処に立っていた。
「運の悪いヤツらだ…!」
「それには同感しちゃうかな」
彼の言葉に頷きながらパパさんの胸ぐらを掴んで恫喝していたオッサンの肩を掴み、引っ張り倒して腕を捻り上げて地面に押さえつける。
ジタバタと無理に動くと折れるから良い感じに加減するのは意外と難しい。稽古や指南を受けてるときは相手が直ぐに「参った」って宣言してくれるけど。
やっぱり実戦だと簡単には負けを認めないわね。
「イデデデッ!?離せ、クソアバッッ」
「子供が居るのに下品な言葉は使わない。そこの黒服のオジサンも投げナイフなんて危ないものを投げるなら子供の事を考えてあげないよ?」
「……そうだな。子供を傷付けるのは良くない。だから子供を傷付けたコイツらを許すわけにはいかない」
そう言うと腕を押さえて蹲っているオッサンを捕まえると力任せに殴り始めた。中国拳法の動きだけど、さっきの投げナイフと良い、殺し屋の感じがする。
私の捕まえていたオッサンも余りにも壮絶な行為に恐怖し、暴れることを止めて、ボコボコに殴られまくっている友達の名前を叫ぶ。
「ちょっと流石にやり過ぎッ…ッ、こんの爺…!」
このままだと殴り殺しかねないオジサンの手を掴んで止めたその時、ポタポタと私の手のひらにナイフが突き刺さって貫通していた。
「お妙さんに何してるんだ!」
「蒼月君、ストップ!!」
私が止まるように叫んだ瞬間、黒服の男の視線が私から蒼月君に移り、怒りと狂喜に呑み込まれた笑みを浮かべて彼に投げナイフを放った。
「お前、あの妖怪を知っているなァ!」
「この、さっきから子供に刃物を向けないでって言っているでしょうが!」
投げナイフが蒼月君に当たる寸前に爪先で刃物を弾き上げ、蒼月君を庇うように伸縮式の槍「虎翼」を伸ばしながら叫び、穂先を黒服の男に突きつける。
「先ずは事情を話しなさい。子供を虐める大人に怒っていた癖に子供を攻撃するなんて余程の事情が無かったらあり得ないわ」
「訳は知らねえけど。妖怪が絡んでるなら、オレも話ぐらいは聞くぞ」
蒼月君の言葉も加わり、彼の戦意は少し弱まった。