「このばか!アホ!儂が冥道に吸い込まれたらどうするつもりだったんだ!?」
「騒いでないで、もっと速く飛べ!!」
「だから直ぐに槍を突きつけんじゃねえ!?」
「おい!バケモンが見えてきたぞ!」
騒々しく騒ぐ蒼月君ととらの二人に徳野さんが叫び、私達はシュムナとバスよりもずっと前に飛び降りて、武器を構える───とは言ったものの、私の冥道残月破は使いこなせていない不完全な代物だ。
シュムナを退けるにはとらの吐く火炎よりも強力な炎を作り出す必要があるけど。私達の手持ちには炎を起こせるものは何もない。
「おっさん、頼むよ!」
「ふざけんなっ、だれが!?」
「蒼月君!よく分からないけど、お願いね!」
いきなり駆け出す蒼月君を追いかけ、とらと徳野さんに蒼月君がしたようにお願い事をして、蛮竜の刀身を激しく回転させて霧を晴らしながら斬撃を繰り出す。
しかし、私の蛮竜でもシュムナの霧を斬ることは出来ず、全身を包み込もうとする濃霧を結界で吹き飛ばしてダメージを軽減する事しか出来ない。
「ぐあっ!?」
「蒼月君っ、蛮竜…!」
金剛槍破もこの妖怪には使えない。
結界を張って蒼月君の休む時間を稼ぐ。
───けれど。この結界もそう長くは続かない。このままじゃ私も蒼月君もシュムナに溶かされて終わりだ。どうにか逆転の機会を探らないと……!
「ぬう~~~~~~っ。おとなしく、このシュムナの腹にはいれええ~~~っ。女は頭からかじってやるぅ~~っ、小僧は両ひざだあぁ~~~~~っ」
そう思っていたその時だった、濃霧に包まれていた私と蒼月君を目映い車のライトが照らしながらシュムナの身体を突き抜け、私は蒼月君に引かれるようにトラックの荷台に飛び乗り、シュムナとは真逆の方向へと向かう。
「徳野さん、どういうこと!?」
「うしおのアホが冥界の門を開いて、シュムナを吸わせるんだとよ!この儂にまで指図しやがって、絶対に喰ってやるからなァ!!」
私の頭を掴んで荷台の下に追いやって、火炎を吐いてシュムナに攻撃と防御を同時に行うとらを見上げる。やっぱり糸色本家の大広間の上座にある掛け軸に載っている「雷と炎の化生」って言うのは────。
きっと、このとらなんだろうなあ。
「チッ。そろそろ儂は行けねえぞ!」
「おっさんもありがとう!お妙さん、手伝ってくれ!」
「お安いご用だよ、蒼月君!」
トラックを飛び降りると同時に蛮竜を振りかざし、蒼月君と交差するように上下に巨大な岩石を斬る。が、蛮竜と獣の槍でも冥界の門を封じる岩石を断ち切れず、私はシュムナの中に取り込まれそうになる。
「忌々しいぃ~~~っ。結界など溶かしてくれるわあ~~~っ」
「ぐっ、痛ッッ……!」
これは、ヤバいかも知れないわね。
ジワリと結界を溶かして私の身体に伸びてきた濃霧が、あと少しで触れそうになった刹那、雷雲と共に雷轟が弾け、私と蒼月君を避けるように岩石を砕いた。
「くぬおぉお~~~ッッ。す、すわれ、吸われてしまうう~~~ッ。こ、このシュムナが冥界の門などに吸われるものかあぁ~~~~~~ッッッッ」
ズオォ────ッ!!!
冥界の門に吸い込まれていくシュムナに安堵した刹那、私と蒼月君の身体に濃霧の手が絡み付き、蛮竜を地面に突き立てるも引きずり込まれる強さに地面を裂いて、私と蒼月君は冥界の門に近付いていく。
「グッ、蒼月君を離しなさい!」
「お妙さんを離しやがれぇっ!」
このままじゃ、シュムナがもう一度戻ってくる。
どうにか、なにかあるはずッ……!
「これでも食らいやがれ、バケモンがァ!!!」
「火っ、火いぃぃ~~~~~~っ」
「いけっ!いってしまえぇえ!!!」
────突如、徳野さんの乗っていたトラックがクラクションを鳴らしながら突撃し、トラックはガソリンで炎上したままシュムナの顔にぶつかり、ヤツを冥界の門の奥へと捩じ込み、冥界の門は崩れた岩で塞がった。
ジュクジュクとした痛みを堪えながら全身に火傷を負った徳野さんをトラックから引きずり出し、傷口を押さえて彼の事を励ます。
「徳野さん、大丈夫!助かる!助けが来るから!」
「……ヘッ、うるっせぇなあ。ボウズ、おめえのお天道さんみてえに綺麗な目で見つめて、俺を信じてくれたからよ。結局、お前らを助けちまったが、俺は最後に真っ直ぐ立ってたかァ…?…」
「うん゛ッ、立って゛る、カッコいいぜ!」
「…ハハ……なら、悪くねえ…」