私と蒼月君は徳野さんに助けて貰い、シュムナを冥界の門の奥へと封じ込めることは出来たけれど。凄く疲れて、悲しい気持ちになっている。
自分は強いからと何処かで傲慢になっていた。蛮竜でも倒しきれない妖怪や幽霊だっている。生まれて初めてかも知れないわね、もっと強くなりたいなんて思ったのも誰かに頼りたいと思ったのも……。
「蒼月君、まだ歩くけど。大丈夫?」
「平気だよ、ほら!」
「けっ。儂の家来までだだっ広い道なんざ歩かなくても良かったのによぉ……うしおがケーサツを呼んだ癖に逃げるからだぞ!」
「逃げてねえよ!走っただけだ!」
いつものように言い争う蒼月君ととらの二人に思わず、クスリと笑みがこぼれてしまった。うん、くよくよしてばかりじゃダメね。
徳野さんが認めてくれるように、真っ直ぐ立って歩いていけるように、私は絶対に折れない。私は人間も妖怪も恐れ戦く糸色本家の当主だ。
いつまでも落ち込んでいるわけにはいかない!
「蒼月君、歩こ…か……あれ?…」
後ろに振り返ると蒼月君ととらがいなかった。
こんなだだっ広い公道で迷子になるの?と困惑する私の真横をトラックが通り抜け、二人の事を探してみるも見つからず、どうしたものかと悩む。
「……缶コーヒー飲も……」
スポーツバッグに入れていた缶コーヒーのプルタブに指を引っ掛け、飲み口を開けて口の中に広がる少し温くなった缶コーヒーの酸味を帯びた味に白い吐息を吐く。
しかし、本当に何処に行ったんだろう?
缶コーヒーの縁に唇を当て、無糖の苦さを楽しんでいると地鳴りのような音をさせるバイクが私の横を通りすぎ、暫くしてUターンして戻ってきた。
「よう。こんなところで何してるんだ?」
「……あ、流君だ?!」
ヘルメットとゴーグルを外して私に話しかけてきたアメリカンバイク?というものに乗った男に、一瞬首を傾げるも直ぐに彼の事を思い出す。
なんで、こんなところに?
「しっかし、糸色も災難だな。あの黄色い妖怪に置き去りにされるなんてよ」
あ、迷子なのは私の方なのね。
大人として恥ずかしがるべきなのか。それとも置いていかれたことを怒るべきなのか。どちらにしても二人を追いかけないといけないことに変わりはない。
「ほらよ」
「わっ、と」
「オレの後ろに乗っけてやる」
いきなり流君の被っていたヘルメットとジャンパーを渡され、ビックリするのも束の間、そう言ってきた彼を訝しむように見つめる。何か企んでいるのかしら?
「そんなに警戒しなくても独りぼっちで不安になってる女を襲うなんざしないさ」
「……なら、乗せて貰うけど。乗り物酔い酷いわよ?」
「マジか、バイクもダメなのか?」
「バイク
そう言うと彼は「選択ミスったか?」と苦笑し、バイクのエンジンを掛け、ゆっくりとジャンパーを身につけながら私は彼の背中に抱き着くように腕を回す。
やっぱり、大きな背中だな……。