何故だろう、ドキドキする。
いつもなら乗り物酔いするのに敵になると言っていた流君に安心して身体を預けることが出来るのも不思議だ。車や飛行機は蒼月君ととらと乗ったけど、こうしてバイクに乗るのも初めてだ。
「チッ。婢妖が騒いでやがるな、飛ばすぞ!」
「うん。お願い!」
流君の言葉に意識は戻され。
真っ暗な道をバイクのライトが照らしていくと目玉に羽の生えた妖怪の群れが集まっていくのが見え始める。耳を澄まして声を聴けば「獣の槍を壊してしまえ」と騒ぎ立て、蒼月君の事を狙っていることが直ぐに分かった。
蛮竜も獣の槍に並べ立てられる霊槍の筈なのに、奴らは私を一瞥すると逃げるように、まるで見たくないものを見てしまったように逃げる。
「糸色、デケえのが後ろに来てるが行けるか?」
「大丈夫。あれぐらいなら倒せるよ」
「なら、後ろを頼む!」
「蛮竜、滅せよ!千年の怨み、今こそ晴らさせてもらうぞおっ!!犬に続き、半妖、ましてや人にすら敗れるなどあってはならぬことだあっ!!」
下半身の崩れた巨大な妖怪。
何重にも枝分かれした骨が羽のように伸び、公道を破壊して迫り来る姿はハッキリと言えば恐ろしげに見えるけれど。私はもっと怖いヤツを知っている。
走行するバイクの後ろで身体を入れ換え、後ろ向きになりながら蛮竜の鞘袋を外し、一気に片付けるために金剛石の蛮竜へと穂先に変化させる。
「依りにもよって飛妖蛾のヤツかッ!」
「金剛槍破ァ……!!!」
「我は負けぬ!中国最強の名も取り戻し、我を貶めた憎き狐を討ち、犬の一族を滅ぼすのだあっ!!」
私に手を伸ばしてきた飛妖蛾の身体を数千本の金剛石の槍が貫き、中途半端に巨大化した飛妖蛾の身体を穿ち、砕き、粉々に破壊していく。
最後まで何を言っているのか。
分からなかったけど、犬の一族とか半妖とか明らかに私は無関係の話だって事は分かる。いや、もしかしたら戦骨の関係者かも知れないわね。
「ハハッ、それが蛮竜の御業の一つか。一切合切あらゆる妖怪を一撃でブッ壊す獣の槍、強い妖怪の力を取り込み、より強力に強くなり続ける蛮竜。どっちもお上が欲しがるわけだ」
「……蛮竜は百年以上も糸色のものよ?」
「光覇明宗のお上の話じゃ戦国時代に振るっていたのは僧侶だったらしいぜ?」
「お生憎様、戦国時代に振るっていたのは戦骨っていう人も妖怪も戦うことが大好きで、妖怪にすら恐れられた生粋の兇鬼だったそうよ」
「へえ、詳しいな」
「妖怪が蛮竜を見て悲鳴を上げるからね」
「妖怪が悲鳴を上げるのか!?」
私の言葉に驚愕する流君の肩を掴んで、身体の向きを入れ換えてまた彼の背中に抱き着く。心臓の音が聴こえる、やっぱり凄く安心できる。