真っ暗な道を進んでいたその時、婢妖の塊と戦うロングスカートの女の子がバイクのライトに照らされて朧気に見え、よく見れば蒼月君の持っていた筈の獣の槍を何故か彼女が握り締めている。
「糸色、行け!」
「運んでくれて、ありがとう!」
バイクの車体を真横に向けて止めた流君にお礼を言いつつ、蛮竜を振りかぶって巨大な妖怪と化した婢妖の群れを切り裂くと同時に蒼月君が現れ、私と女の子に迫り来ていた妖怪の身体を獣の槍で貫き、たった一撃で婢妖の群れを倒してしまった。
しかし、私と離れている間に何があったのかしら?
そう思いながら女の子に視線を向けると彼女も私の事を見つめていた。悔しそうに小さく呻き、蒼月君の持つ獣の槍と私の蛮竜を交互に見つめている。
「ったく。一人で無茶しやがるなあ、関守」
「お前、秋葉流っ!どうして、糸色妙と一緒にいる!僧正に蛮竜の方を割り振られたお前が、よもや獣の槍を狙っている訳じゃ無いだろうな!」
「おいおい、落ち着けって別にオレは蛮竜も獣の槍にも大して興味はないんだ。いや、あるにはあるが…もっと面白そうなのもいるからな」
そう言うと流君は私を見つめてきた。
「……何、私が目的って言いたいの?」
「さて、どうだろうなあ?」
何処か蠱惑的に笑う流君。
その間にとらを連れて戻ってきた蒼月君に「やっと追い付いたけど、なにがあったの?」と聞けば「白面の者の手下に襲われてた」と言われ、まさか彼女に獣の槍の場所を知らせたのも作戦の内かと考える。
「蒼月潮、今暫くは獣の槍を預けておいてやる!それと糸色妙、血筋から選ばれただけのお前を認めるつもりも毛頭無いからな!」
「良く言うよ。昔、糸色に助けられたことオレにまで嬉しそうに話していた癖に今更嫌ってるふりしたところで後々困るのは関守だぜ?」
「だ、黙れ!」
昔、助けたって何時のことだろうか。
私は顔を赤らめて怒る彼女を見つめるが、彼女は顔を逸らして「良いか!獣の槍を使うのは私だ!必ず、受け取りに来るからな!」と言い残して、ゆっくりと真っ暗な道へと消えてしまった。
「…蒼月君、彼女の名前は?」
「えっと、関守日輪だってさ」
せきもり、ひのわ…。
うーん。と人差し指を下唇に当てて熟考する。頭の中には助けてきた人の顔も私を襲ってきたヤツの顔もあるけど。みんな成長しているし、そう簡単に子供の頃の思い出せ……いや、そういえば前に一度だけ蛮竜で高校生の頃に助けた子がいるわね。
「……あの時の後輩、確か名字は関守だったわね」
ポツリと真っ暗な道を見つめながら私は呟いた。