朝御飯を食べ終えた私と蒼月君は旭川まで乗せてくれるというバスの運転手のおじさんに感謝しながらバスの乗降口に乗り込もうとした時、鋭い視線を受ける。
流君、本当に私と戦うつもりか。
とらにも同じように視線を向け、私ととらの二人を同時に相手するつもりのようだけど。私は「とら、相手してあげたら?」と何も気付いていない蒼月君に代わって、そう彼に言ってあげる。
「ちっ。しょうがねえな、儂の強さを恐れるのは分かるが法力僧がたった一人で相手しようなんざ千年早いことを教えてやらァ…」
ふわりと浮かんだとらを見送り、私は蒼月君と一緒にバスに乗り込む。流石に蛮竜を席には持ち込めないから荷物置きに置かせて貰い、酔い止め薬を飲んで蒼月君の隣に座って、静かに目を瞑る。
エンジンを掛けて動き始めた瞬間、急激に襲ってくる酔いに気持ち悪くなりながら背凭れに身体を預け、とらと流君の戦いがどうなってちるのかを考える。
蒼月君はもう仲良くなったバスの乗客のお姉さん達やおじさん、おばさんと楽しく話している最中、ひんやりとしたものが私の額に触れる。
「……どうかしたの?蒼月君」
「お妙さん、飲み物くれたんだ。ほら」
「えっ、ああ、ありがとうございます」
ニコニコと笑っているおばさんに感謝の言葉を言いつつ、冷えた林檎のジュースを受け取る。阿部林檎農家厳選、果汁入りジュースか。
そういえば北海道だったわね。
パックの背面についているストローを抜き、飲み口に尖った方を突き立てて穴を開ける。ちゅうっとストローを咥えて甘い林檎の香りと味が口の中を見たし、少しだけ酔いが和らいだように感じる。
今度、阿部さんのところでジュースも買おう。本家の人達は品質を大事にしろとか言いそうだけど、日本林檎農家の総元締めに何を言っていてるのだろうか。
「…んッ…妖怪の気配?…」
気持ち悪さを我慢しながら席を立って運転手の方を見た瞬間、蒼月君が一気に床を蹴って、運転席まで近付き、運転手のおじさんに絡まり付いていた婢妖の群れを切り裂き、私は手足に傷を負ったおじさんのシートベルトを外し、後ろの方に引きずり出して運転席に座り、そのままブレーキを踏みつける。
「お妙さん、止められる?!」
「……ダメね、完全に乗っ取られたわ…」
しかし、困ったことになってきたわね。
蛮竜自体は結界を張っているおかげで破壊されたり奪われる心配はないけど。蒼月君の獣の槍に比べると今私が自由に使える