「お妙さんの家って、そんなに大変なんだね」
パチパチと乾いた木を燃やす音を聴いたとき、ぽつりと蒼月君がそう呟く声が聴こえてきた。大変。そう一言で片付けるには中々どうして、とても辛くて面倒臭い事ばかりだったと思い返す。
まあ、いい人も居るには居るけど。
そういう人達は決まって他の分家から不利益を被り、その皺寄せを挽回したという猿芝居と口実を作り、分家は私の隣に息子や孫を添えようとする。
「まあね。けど、面白いわよ?」
「確かに、糸色の傍は良い風が吹く」
「オレもお妙さんといるの楽しいよ!」
流君と蒼月君の言葉にビックリして、少しだけ笑みを浮かべて「ありがとう。私も貴方達のそういうところ好きよ」と言葉を返す。
「性根の腐った人間なんぞ此処彼処に居るじゃねえか。嫌だね、儂はそんな窮屈そうな場所に留まるなんてことはよ」
「ハハハ、とらは本当に素直ね。ありがとう」
「やめんかい!?こっ恥ずかしい!」
とらの事を褒めたのに逃げてしまった。
やっぱり、妖怪は畏れを必要とするのかしら?
「しっかし、蛮竜は最初から糸色家の物だったことは知らなかったぜ。光覇明宗の四師僧は元々は自分達の物だったって言ってたのにな」
「案外、獣の槍も蒼月家の物だったりしてね」
「えぇ!?あ、あり得んのかなあ?」
私の少しだけ揶揄うような言葉に蒼月君は自分の持つ獣の槍に視線を向け、少しだけ戸惑ったように鈍く銀色に光る穂先を見上げる。
どの組織も獣の槍の出自は知らず、おそらく獣の槍の生誕を知っているのは白面の者か、それと同じくらい長く生きてきたとらだけだろう。五百年前に造り出された蛮竜と違い、獣の槍だけは誰も製造法を知らない。
まあ、蛮竜は妖怪の鍛えた
「糸色、試しにオレにも触らせてくれよ」
「さっきの見ていたのによく言えるわね、流君」
「男っていうのはロマンが好きなのさ」
そう言って笑う流君の目の前に蛮竜を突き立て、蒼月君の隣に座り直すとジャンパーを脱ぎ、ジーンズとタンクトップ一枚になった流君は蛮竜の柄を握り締めた。
刹那、青白い雷撃が流君の身体を拒む。
「ぐおッ、コイツは効くなあ…!」
ゆっくりと蛮竜から手を離した流君は金髪のオールバックを乱し、ふらつきながら地面に座り込み、バチバチと全身にまだ残っている雷撃を地面に流している。
「こりゃダメだな。オレには使えねえ」
「お、オレも試してみようかな?」
「蒼月君も試すの?良いけど、気を付けてね」
そう言うと蒼月君は頷き、蛮竜を握った瞬間、青白い雷撃ではなくシンプルに吹き飛ばされた。獣の槍を使えるから嫌っているのか?