「───さあ、話したぞ。次はお前が教えろ」
そう言うと黒服の男、符咒士を生業とする
「
何処かで見たことがあると思ったら彼は本家の禁書庫に仕舞われていた「うしおととら」に登場する男だ。
復讐のために生きる男、本家のクズな奴らは知っているのに歴史を変えるわけにはいかないと重要な出来事を秘匿し、こうして知ってしまった事を思い出して哀しい気持ちになる。
まあ、知っているのに忘れていた私も同罪だな。自動販売機で缶コーヒーを二つ買い、蒼月君にもぶどうジュースを買って公園に戻る途中、苦しそうに顔をしかめた蒼月君と擦れ違った。
追い掛けるべきなんだろうけど、アレは他人がとやかく言って従わせて良いものじゃない。強くなるために、自分の意志を貫くために必要な葛藤だ。
「はい。缶コーヒーだけど」
「
「平気、それに痛いのはオジサンの心でしょう」
そう缶コーヒーのプルタブを開けつつ、言い返すとサングラス越しに私を睨み付けてきた。謝る癖に怒る、分かっている癖に分からないふりをする。
ほんっとに男の人って難しいわね。
ゆっくりと深い溜め息を吐いて、缶コーヒーのプルタブに爪を引っ掛け、乱暴に開けた鏢に視線を移す。傷だらけの男、心も身体も傷付いて、行き先は未定のいつ巡り会えるのかも分からない復讐の相手を探す旅。
「……はあ、日本の缶コーヒーは甘いな」
「微糖だからね。無糖が良かった?」
「いや、甘いものは頭に良い」
「そう。じゃあ、頑張ってね」
まだ半分も飲んでいない缶コーヒーを花壇の縁に置いた鏢に挨拶を済ませた私は蒼月君と同じように振り返らず、公園を出ると同時に背後で雄叫びが聴こえてきた。
辛く、苦しい、雄叫びだ。
「……蒼月君、大丈夫かな……」
緩んでいたヘアゴムを解いて、前髪を掻き上げる。
まだ中学生の子供に聞かせるには、少し酷な話だったから心配になってしまう。とらはそう簡単に負けることはないだろうし、鏢との戦いが始まったところで心配してあげる必要は多分ない。
ゴクリと缶の中に残っていたコーヒーを飲み干し、ゴミ箱を探しながら蒼月君の住んでいるお寺を目指して歩いていると彼のお父さんと出会った。
まあ、監視なんだろうけどね。