私を狙っていたバイカーに似たライダースーツを身につけた集団がテントを片付けている蒼月君ととら、流君の周囲を囲う。しかし、またかと呆れる私はまるで蚊帳の外であるかのように見向きもされなかった。
今度は獣の槍を奪いに来たわけね。
「その気配に錫杖の模様、杜綱んとこか」
「もりつな?」
「オレと同じ獣の槍の伝承者候補の一人だ。少なくとも多勢に無勢で攻撃して来ることはしないヤツだが……純、こいつはお前達の独断か?」
「秋葉、蛮竜の伝承候補のアンタには関係無いわ」
「ヘッ。お生憎様、オレにゃあ蛮竜を使うことも、況してや触れることすら許して貰えなかったよ。それに蛮竜よりも良いものも見つけたしな」
そう言うと流君はシャランと錫杖を振るい、蒼月君ととらを庇うように構える。それに応えるように三人を取り囲んでいたライダースーツの集団も独鈷や錫杖を構えて、三人を睨み付ける。
少なくとも私には関与しないということなんだろうけど。チラチラと私の胸元を見つめる視線が気持ち悪いわね。初めてのキャンプを楽しみたかったのに、全く蒼月君達は本当に仕方ないわね。
「貴方達、そこまでに────ッ!!?」
今にも戦いを始めそうだった全員を仲裁するために一歩前に踏み出した瞬間、真横から地面を削り進んできた見たこともない妖怪に身体を押し飛ばされる。
力で競り負けた事は何度かあるけど。
「吹っ飛ばされたのは初めてだわ!蛮竜!!」
いつものように蛮竜を引き寄せ、その刀身を踏みつけながら熱風を放って妖怪の巨体を弾き上げ、ゆっくりと地面に着地すると同時に目の前に立つ狩衣装束の男を見つめる。なんだか見覚えがあるような気もするけど。
「に、兄さん…!」
「やあ。純、二週間も離れてすまなかったな」
「女の子を殴るんじゃねえ!」
にこりと穏やかな笑顔のまま優しく彼女の頭を撫でたかと思った次の瞬間、彼女の顔を力任せに殴り付け、それに怒った蒼月君に反応してギョロリと異常に盛り上がった目が、私の蛮竜、蒼月君の持つ獣の槍を見据える。
「お前、悟じゃねえな」
「何を言う。流、私は杜綱悟だ。獣の槍の伝承候補、此度は蒼月潮の持つ獣の槍を貰い受けるために馳せ参じた次第だ。蛮竜を扱えなかった自分の様に、私の事を邪魔立てするつもりか?」
穏やかな笑顔の貼り付いた顔で毒を吐き、見たことのない妖怪を従える彼に戸惑い、狼狽えるライダースーツの集団を庇うように立ち、蛮竜を振りかぶる。
「風の傷っ!!」
「私の式神の妖気の裂け目を斬ったか。だが、木気に属する風は金気によって封殺できる」
「なッ、くうぅうっ!?」
「お妙さん!」
「糸色ぃっ!」
「二人は彼を止めなさい!」
三本の妖気を切り裂く衝撃波は「もりつなさとる」が自分自身の目の前に突き立てた錫杖によって霧散し、その隙間を縫うように大量の妖怪が押し寄せてきた。
ブワリと扇状に広がった十匹を越える巨体の妖怪に押し飛ばされる私に駆け寄る前に指示を飛ばす。
無理やり妖怪に空高くまで突き上げられながらも蛮竜を金剛石の刀身に変化させて妖怪の群れに向かってゼロ距離で金剛槍破を叩きつける。
クソ、かなり引き離された。