「もりつなさとる」の策略で蒼月君達と分断、単独ならば私を封じ込める手段或いは策を巡らせているのかと考えつつ、車道脇に立つガードレールの支柱に着地し、地面を這う妖怪を無視して駆ける。
カンカンカンと鉄を蹴る音に反応して、この前のバスや真夜中の車道を封鎖していた婢妖が地面を突き破り、私の身体を縛り付け、身体を絞め潰そうと動く。
「雷撃よ!」
その呼び掛けと共にカッ!と青白い雷撃が地面を焼き焦がし、婢妖の群れを燃えカスに作り替えていき、ようやく「もりつなさとる」と戦っている蒼月君達のことが視界の先に見えてきた。
しかし、私の視界を塞ぐように蛭のような妖怪が現れ、私の身体を締め上げる。
「うぐっ。思ったより速いわね…!」
ミシミシと歪な音を立てて絞まり続ける身体にギザギザした牙を無数に生やした口が、どろどろとした粘液を滴しながら迫り来る。
「私の身体に寄生なんてさせるわけないでしょう!」
蛮竜の刀身を蹴り上げて、私の身体を締め上げていた触手を切り落とし、車道の白線を踏みつけるように着地し、キッと蛭のような妖怪を見上げる。
よくもやってくれたわね、この破廉恥妖怪が。
怒りに任せて蛮竜を振るおうとした刹那、蛭のような妖怪の身体をたった一撃で破壊したとらの雄々しく雷火を纏う姿に思わず、見惚れてしまう。
「けっ。所詮、人間に使われる雑魚か」
「大将、物凄くカッコいいわ!!」
「ヘッ。何当然の事言ってやがる、さっさとあの人間の周りに纏わりつく妖怪も片付けちまうぞ!」
「えぇ、行きましょう!」
とらの言葉に頷いて駆け出していき、蒼月君ととらの動きが交わり、「もりつなさとる」の式神を蹴散らし、側面から回り込んだ私は蛮竜を横薙ぎに振るい、石突きで彼の持つ独鈷剣と鍔迫り合いを始める。
「グッ。おのれ、糸色ぃ…!」
「貴方も私を知っているみたいだけど。私は強引な人って嫌いなのよね!」
「御方様に楯突くにんげッ、ぐうっ…!?…」
御方様。そう「もりつなさとる」が呟いた瞬間、彼の身体から婢妖が弾けるように飛び出し、直ぐにまた彼の身体に取り込まれていく。
「貴方、まさか……」
「お、追うな…!…追わないでくれ、妙ちゃん…!」
突然の名前呼び、しかもちゃん付けにビックリしてしまった私の身体を押し退け、彼はまたしても蛭のような妖怪を呼び出し、その背中に乗って私達から逃げるように何処かに逃げていった。
妙ちゃんって、まるで知り合いみたいに言いますね。
「お妙さん、知り合いだったのか?」
「えっ。いや、心当たりはないんだけど。妙ちゃんなんて小学生かもっと前くらいに友達と遊んでいたときに呼ばれたくらいだし」
「ま、悟に会えば分かるだろう。妙ちゃん?」
ニヤリと笑って私の名前を呼ぶ流君に「私は流君のそういういたずら好きなところは良くないと思うな」と言いつつ、未だに呆然とする彼の妹と仲間に「私達は追うけど、着いてくるわよね?」と言う。
多少なり、発破は必要でしょうからね。