「大したもんだぜ、全くよぉ!」
「やったわね、蒼月君!」
「イテッ、へへ、おう!」
私と流君はボロボロになった蒼月君を抱き締め、ワシャワシャと彼のスポーツ刈りとか呼ばれる短く切られた髪の毛を撫でながら笑い、彼のおかげで誰も死ぬこと無く妖怪を退治できた事を喜ぶ。
「うしおくん、ありがとう!」
「いいっ、いいって!?オレは自分のやりたいことをやっただけだから、それより早く兄ちゃんのとこ行ってやれよ、な?」
純に抱きつかれて赤面する蒼月君に思わず、流君に視線を向けると彼も同じことを思ったのか。
私達は「なぁにぃ?蒼月君はああいう女の子が好きなの?」とわざとらしく聞いてみると「そ、そんなんじゃないやい!」と顔を更に赤くして怒ってきた。
フフ、分かっているわよ。
怒る蒼月君を慰めていると杜綱悟が肩を借りながら私達のところまでやって来るなり、いきなり蒼月君に向かって深々と頭を下げてきた。
「蒼月くん、助けてくれてありがとう。君のおかげで純も妙ちゃんも傷つけずに済んだ」
「いや、さっきも言ったけど。やりたいことをやっただけだからさ。あ、でも一つだけ聞いてもいい?なんでお妙さんのこと『妙ちゃん』って呼ぶの?」
「えっ。彼女に聞いていないのかい?」
「お兄ちゃん、私も知らないんだけど…」
そして、私も知らないわね。
みんなの視線が自分に集まっている事に気づき、少し頬を引き釣らせて河原の岩に腰掛けた彼は少しだけ悩んだように唸り、ゆっくりと口を開けた。
「子供の頃、私と純は田舎の方に預けられたという話は知っていると思うが、その時に会っているんだ。私が10つ、純が8つのとき、長野県の少し人里離れた信州市の田舎に預けられたんだ」
「へえ、糸色本家の建つ場所に来てたのね」
そう呟くとみんなの視線が私に向く。
「まさか、覚えていないのか?」
「ごめんなさいね。覚えていないわ」
「じゃ、じゃあ、約束は!?」
どこか焦ったように私の両肩を掴んできた杜綱悟にビックリしながらも倒れないように身体を支えた瞬間、彼の悲しげな瞳が私を見つめていた。
「おい。離してやりな」
「───ッ、すまない」
「いや、別に構わないけど。約束って?」
「……私のお嫁さんになる、という約束だ」
は?
あまりにも突然すぎる言葉に動揺し、こめかみを押さえるように右手の指をこめかみに添える。これ、絶対に思い出してあけないといけないやつだわ。
でも、子供の頃の約束なのよね。
どうしたものかと思いながら杜綱悟と流君の二人を交互に見る。しかし、これだと私は二股をしようとしているみたいになるわね。
「とりあえず、保留って事で」
「そんなっ」
「ハハハ、残念だったな。悟」
「……そうか。蛮竜の伝承候補は流だったな」
ポツリと怪しげに彼は呟いた。
まだ、身体の中に婢妖が残ってるのかしら?