「女、大丈夫なんだろうなぁ!!」
「えぇ、ちょっと血を吐いただけよ」
私を背中に乗せて国道を駆け抜ける真っ黒な影、いや、周囲の妖気を取り込んだ分だけ、髪の毛のように伸びた妖気を地に擦り付けることなく駆け、手当たり次第に妖怪を滅ぼす獣の槍を私達は追う。
あの怪力もそうだったけど。
蒼月君とは思えないほどに怒り狂った形相、あれこそが獣の槍を使った者の本来の姿なのなら、私は糸色家の当主として絶対に彼を止めないといけない。
「しかし、蛮竜に傷をつけるなんざやっぱり獣の槍はおっかねえなあ……五百年前に一度砕けたって噂は聞いていたが、あの泣き虫侍がやったのかねえ?」
「それって、とらを獣の槍に縫い付けた侍?」
「ああ、思い出すだけでムカつくぜ!ワンワンと嫌になる程泣きやがるし、その癖……どんなに戦っても飽きないようなヤツだったよ」
「けっ。お前が負けた話なんて聞きたくないね」
「イズナ君、顔を出したら危ないわよ」
私のシャツの中に入り込んで胸元から顔を出す小さな妖狐のイズナ君にそう言いながら、私は蛮竜に傷を付ける獣の槍に取り込まれた蒼月君を助けるために、もっと急がなければいけない。
『蛮竜の娘よ、此方へ』
「─────ッ!?」
「チッ。次から次へと面倒臭せえなあ!」
ゆらりと淡い蛍火色の光を纏う中華風の衣装を身につけた女性に驚き、蛮竜を構えようとするも蛮竜は何かを訴えるように鳴動し、私は矛先を納める。
「貴女は、だれ?」
『私の名はジエメイ、蒼月潮のため貴女に頼みがあって参りました。あの子が生まれてから百年の暦を糸のように紡ぎ、色鮮やかに駆けてきた貴女の力をお貸し願う』
「要するに手伝えって事でしょう。OKよ!」
「うしおはどうすんだよ、こらぁ!?」
「フフ、とらに全部任せるわ。お願いね、大将」
「……だあああああああっ!!?わぁーったよ!」
ジエメイと名乗った女性の言葉を承諾し、とらの背を蹴りながら飛び上がり、彼女の向かうべき場所を目指すために蛮竜の熱風を利用して彼女の後を追う。
流君や杜綱悟の視線を感じたけど。
私より蒼月君を心配してほしい。ちょっと血を吐いて肋や内臓にダメージを負っただけで、大して痛いわけでもないから本当に問題ない。
「ジエメイさん、蒼月君は何処へ?」
『神居古潭、その場に在る白面の者の身体の一部に獣の槍が吸い寄せられ、彼は其処へ向かっている。そして、貴女もまた神居古潭へ向かわなければいけない』
「……そう、私にも関係があるのね」
私、というよりも糸色家に関わる問題か。