私とジエメイは虎のように大きく猛々しく変身したスネコスリの親分君の背中に股がり、一瞬で景色が変わるほどに素早く木々の間を駆け抜け、崖を飛び越えた瞬間に婢妖の大群が押し寄せる光景が見えた。
「親分君、行けるわね。ジエメイ、貴女は蒼月君達のところへ戻ってあげて、きっと貴女の助けがみんなには必要になるからさ」
『……お頼みします。糸色妙、しとりの曾孫』
「ハハハ、任せなさい!」
風に乗って消えたジエメイから此方に向かって来る婢妖の大群を見据えつつ、私は蛮竜の柄を噛み、ジーンズのポケットに仕舞っていた赤い鉢巻きを取りだす。
しとりお婆様に貰った彼女の大切な宝物、いつも大事なときに巻くように言い付けをされていた鉢巻きを、ゆっくりと頭に巻き付けながらスネコスリの背中に立ち上がって蛮竜の柄を両手で握り締める。
「此処を通りたくば私を倒してみせろ!私の名前は糸色妙、百年前にお前達の化身の一体を倒した相楽左之助の子孫だ!!」
「人間風情がたった一人で何が出来る!」「我らは三千万を超える婢妖の群れ、如何に蛮竜が強くとも小娘一人では止めきれんぞ!」「御方様のため、我らは貴様諸とも蛮竜を消し去ってくれるわあっ!!!」
私の挑発にまんまと乗ってきた婢妖の群れに突撃し、蛮竜と背中に仕込んでいた槍を引き抜き、鉾と槍を同時に振り回し、スネコスリの背を蹴り、合体して大型の妖怪に変化する婢妖の眼球に手槍を突き刺し、石突きを踏みつけながら更に高く飛び上がる。
「風の傷っ!!!」
「犬の大将の御業かあっ!」「おのれえ、奈落は何をしているのだ」「我らに手を貸すと抜かしおった癖に逃げたかっ」
妖気の亀裂を切り裂き、妖気の衝撃波を放つも切り裂いた分だけ更に多くの妖怪が溢れ返り、私の身体に食らい付き、蛮竜に絡み付くヤツを雷撃で消し飛ばす。
ゆっくりと落下する私をスネコスリの親分君は背中で受け止めてくれ。私は「ありがとう、親分君」とお礼を言いつつ、蛮竜を横薙ぎに振るい、力を溜め込むように金剛石へと刀身を変えた蛮竜を両手で握り締める。
「金剛おぉ槍破あっ!!!!」
真っ直ぐに振り下ろした蛮竜から、百、千、万、と振るう度に金剛石の槍が攻撃範囲と規模を高め、婢妖の大群を悉く貫き、貫通しても止まることなく彼らの身体を一撃で破壊し尽くしていく。
「はあっ、はあ…良いこと思い付いたわ」
ゆっくりと蛮竜を掲げるように構えた瞬間、月明かりを反射していた金剛石の刀身が漆黒に染まり、私を乗せてくれていたスネコスリの毛が逆立つ。
「フフフ、この攻撃なら一発であなた達をあの世に送り込めるわよ。冥道残月破っ!!!」
たった一度の振り下ろしで数百の三日月状の斬撃が咲き乱れ、私達を取り囲んでいた婢妖の大群が冥道の中に吸い込まれていく。
「しかし、まだまだ多いわね。蒼月君、とら、一緒に手伝ってくれる?」
そう言って私は後ろに振り返った。
「おう!行くぜぇーっ、とらあっ!!」
「うるっせぇーんだよ、うしおっ!!」
私と入れ替わるように蒼月君ととらが月明かりに照らされ、数百万まで数の減った婢妖達に向かって突撃し、いつものようにカッコいい背中を見せてくれる。
やっぱり、良いね。二人が揃っているのはさ。