ジメジメとした蒸し暑い夏の陽射しを受け止めるには暑苦しいジャンパーを脱ぎ、温くて不味くなった缶コーヒーを飲みながら人避けの結界と妖怪を閉じ込める二重の結界を張り巡らせた鏢の手数の多さに驚く。
「蒼月君のお父さんは何もしないわけ?」
「私の手出しする問題ではないよ。百年前、白面の者の執着を受けるようになった人妖問わず、何者も触れることすら赦されぬ禁忌の一族殿」
「……その呼び方には語弊を感じる」
カリと缶コーヒーの飲み口を噛み、ムッと怒った様な表情を蒼月君の父親───光覇明宗の僧侶・蒼月紫暮に向けると飄々とした態度で受け流された。
食えない男って嫌いだわ。
「それでさ、蒼月君はどう?」
「倅はまだ悩んでいるよ。この1ヶ月に数度に渡って死線を共にした者を討たせる、なまじっかとら殿の人となりを知ってしまった故に潮は彼を友と認めている」
「人と
「さてな。だが、私にもそういう友はいる」
それは人、それとも妖怪だろうか。
チャプッ…と音を立てて、缶コーヒーを傾ける。
私にも知り合いはいるけど。ドイツもコイツも「糸色」「予言」「お金持ち」って、まともに私個人を見るヤツなんていなかった気がする。
まあ、そこは別に良いかな。
「蒼月君のお父さんのところは獣の槍が出てきたこと知っているみたいだけどさ。私のなのに『蛮竜も他の妖刀や霊槍も我々が管理するべきだー』とか言ってたわよ?」
「全く、最近の若者は血気盛ん過ぎるな。法力を使えるといえど力量を測る目を養わなければ意味はない。とくに妖怪の様に姿形を変える相手と戦うには、真の姿を見極める必要がある」
「とりま、言いたいことは分かった」
「と、とりま?」
「とりあえずまあの略語、知らないの?」
「うむ、むう……今の子は分からんな」
そういう私は蒼月君のお父さんのほうが分からないよ。自分の実力を隠して、普通に戦えばとらと同等の強さだろうに。蒼月君を守るためだけに威圧を飛ばして、とらの動きを引き留めるだけ。
けど。そういうのも親の愛なんだろうね。
「何か進展が有ったら教えてね」
「承知した。しかし、糸色殿はもう少し肌の露出は控えるべきだと私は思うのだが」
「今日は偶々タンクトップなだけだっての」
空っぽになった缶コーヒーを手に持ったまま後ろに振り返って蒼月紫暮に笑いながら文句を言い、若者のファッションに着いてこれていない蒼月君のお父さんの言葉に思い出し笑いを繰り返す。