スネコスリの親分君の背中に乗ったまま、蒼月君ととらの後を着いてススキの群生地に降り、中村のお嬢さんや井上のお嬢さん、今まで蒼月君ととらが助けてきた女の子が集まっている光景に思わず、目を見開く。
「(ジエメイの蒼月君を助ける方法ってこれか。私は蛮竜を強くするためと露払い……いや、肩慣らしをしていただけだったけど。彼女達が助けてくれたなら良いか)」
そう一人で納得しながら蒼月君のお父さんを見かけ、ゆっくりとお辞儀をし、彼の近くに立つ傷だらけの流君と杜綱悟に「みんなを守ってくれてありがおう。お疲れ様」と言葉を送り、蒼月君に視線を向ける。
とらの背中に乗ってなにかを彼女達と話しているのか。よく聴こえないけれど、きっと蒼月君にとって幸せな事を話しているのだろう。
そうだと私も嬉しいからね。
「うしおのヤツは本当にすげえなあ」
「あれだけ傷付いて尚も笑顔とは、な」
そう言って話す杜綱悟と流君に「あなた達も大分分かってきたわね」と言い残して、私は穏やかに微笑んでいる蒼月君のお父さんに歩み寄る。
「こんばんは、蒼月君のお父さん」
「ああ、こんばんは。糸色殿、君のおかげで潮は寂しい思いをせず無事に、ここまで辿り着く事が出来た。御助力、御支援、誠に感謝致す」
「ハハハ、そう畏まらないで下さいよ。私は新しく出来た大切な友達を助けたくて着いてきただけ、そこに糸色本家の意思も策略もありませんから」
クスリと笑って蒼月君のお父さんを見上げる。
やっぱりこの人はいつも蒼月君の事を心配していて、とても優しく温かい人だ。こういう人がもっと居てくれたら糸色本家も更に繁栄すると思うんだけど。
最近は才賀や黒賀が何かしているし。
妖怪以外にも面倒臭いことが多くて大変だ。もういっそのこと弟に家督を譲ろうか?いや、あの子は熱血というか、たまに鬱陶しいのよね。
「糸色妙、お前は行かないのか」
「あら、日輪も来ていたのね」
「さっきぶり、妙さん」
私が蒼月君ととらに着いていかないことを聞いてきた日輪と純の言葉を聞き、どうしようかと小首を傾げる。少なくとも獣の槍に関わる事柄で、あの洞に入っていいのはあの二人だけだと思う。
「まあ、二人だけで良いんじゃないかな?」
おそらく「うしおととら」において、ここは重要なポイントになると思うし。なにより洞の奥に感じる気配から寂しさと悲しみを感じてしまう。
私は入ってはいけない場所だろう。
「私は待つ事にするわ」
きっと、それが一番正しい選択だ。