洞の中に入っていった蒼月君ととらを待つ間、井上のお嬢さん達は先に帰るらしく。日輪と純の二人にも暫しのお別れの挨拶を交わし、私はススキの群生地から外れた場所に座り込み、蛮竜を磨く。
ススキを掻き分けて私の隣に当たり前のように座った流君に驚き、蛮竜を磨く手を止めて彼の事を見上げる。蒼月君のお父さんもそうだったけど。
随分と無茶をしたのね。
「糸色、うしおのヤツは大丈夫か?」
「さあ?あの姿になったときは心配したけど。もう大丈夫だと思うわよ、ああいうものに変わるのは本当に危ないときか無理を続けたらだもの」
そう言って蛮竜を地面に置き、洞の中で何をしているのか。はたまた何かと戦い、何かを知るために話を聞いているのかも知れない蒼月君ととらを思う。
もっとも二人なら問題なく乗り越えるだろうけど。やっぱり友達の今後に関わることは、どうしても気になるし、不安を募らせてしまう。
ふと私と流君を見下ろすように立つ杜綱悟の視線に気付き、どうかしたの?と問いかけると「妙ちゃん、何故そんなに流の近くに座っているんだ?」と言われた。
いや、何故って言われてもねえ。
いきなり私の隣に座ってきただけで、私が隣に座るように強要した訳でもない。あまり変な勘違いを起こすのはやめて欲しいわね。
「悟、その言い方はねえだろ。糸色だって何でもかんでも束縛するような男は嫌だよなあ?」
「何を言う!私は妙ちゃんを束縛しよう等と考えたことはない、ただ子供の頃に交わした約束を思い出して欲しいだけだ」
約束って言われても私は覚えていないんだけど。
そもそもそれは本当に私なのかしら?と小首を傾げつつ、私の両隣に座って文句を言い合う男達に溜め息を吐く。これなら、まだ蒼月君や私の弟の方が良いかな。
「全く最近の若者は好きな女の子を口説くよりもライバルを牽制し合うものなのかね?」
「好きな女の子……ああ、そういう?」
蒼月君のお父さんの言葉に流君と杜綱悟の二人のやり取りの意味を理解し、私の左右を固める二人の事を見上げ、クスクスと笑ってしまった。
「へえ、そうなんだ。へえぇ~っ♪︎」
ゆっくりと立ち上がって二人の事を見つめる。
二人とも恥ずかしそうに顔を逸らしたりしていたものの、しっかりと私の事を見つめるように見上げてきた。蒼月君のお父さんの言う通りだったわけか。
「オレはまだ会って間もねえが好きだぜ」
「私も妙ちゃんのことが好きだよ」
そう言って私の手を二人は握ってきた。
しかも無駄に力が強いから振り払いたくても外れず、思わず苦笑いを浮かべながら蒼月君のお父さんを見ると何かを思い出して、感慨深そうに微笑んでいる。
コイツ、使えないわね。
「じゃあ、私に勝てたらあなた達のどちらかのお嫁さんでも何でもなってあげる。まあ、私に勝とうなんて千年早いけどね」
そう言って私は手を払い、二人に笑顔を向ける。
わりと面白いかもね、二人となら。