「中々止まないわね」
温かい缶コーヒーの飲み口に唇を当てて、のんびりと電車の運行を待つ私の呟きに胸元の谷間に挟まったままイズナ君はお土産屋さんで買ったお菓子を食べている。
「仕方ねえさ、この吹雪は妖怪の仕業だからな」
ああ、やっぱりそうなんだ。
イズナ君の言葉に思わず、納得しながら私は彼を服の中に押し込めて吹雪の中を歩く人影を見据える。何度も相手しているから気配だけで分かる。
「こんにちは、強羅」
「よう。勝負しに来たぜ」
「いやよ、さぶいもん」
「なッ、いつでも来いって言ったのはお前だろ!?」
「確かにそう言ったけど。強羅は女の子に寒空の下で戦えって言うの?」
チャプンとまだ中身の残っている缶コーヒーを突きつけるように問えば良心的呵責を繰り返しているのか。強羅は私と外の猛吹雪を見比べ、唸りながら私の腰掛けていたベンチの隣に座った。
私と戦うために北海道まで追い掛けてきたのはビックリしたけど。私の周りにいる男の人って、私を見る目がやっぱりジットリしているのよね。
何故かしら?
まあ、そういうものなんでしょう。
「で、何かあったのかよ」
「何かって?」
「秋葉や杜綱のヤツに駅前で絡まれてたろ」
「ああ、あれら告白されただけよ?」
「こくっ、いや、そうか」
強羅は何か言いたそうにしているが、まともに私に顔も視線も合わせない。私と戦っているときは、しっかりと私の事を見つめるのに不思議な男の人だ。
まだ開けていない缶コーヒーを差し出すとプルタブを片手で開け、味も何も関係ないと言わんばかりにゴクゴクと喉を鳴らして強羅は缶コーヒーを飲み干した。
「止まないわね、吹雪」
「雪女を殺しゃあ止まる」
「雪女?へえ、私でも名前知ってるわ。あれなのかしら、妖怪の中でもレジェンドとかそういう立場にいるのかしらね?」
「ハッ。妖怪が妖怪を敬うかよ、もしもそんなヤツが居たら頭のおかしい妖怪か、底抜けに良いヤツで誰彼に愛されているヤツだろう」
そう言って空き缶を握りつぶした強羅の背中を見送り、時計塔の上で蒼月君と吹雪を吐く二人の妖怪を見つけ、加勢するべきかを悩む。
私の存在が彼の成長を妨げているかも知らない。そう考えるとどうしても悩んでしまう。洞のときも私はほとんど役に立っていなかった。
「ぷはあっ!?窒息するかと思ったぜ」
「あっ。ごめん、忘れていたわ」
私の服を飛び抜けて現れたイズナ君に謝りつつ、少し蒸れたのか汗を掻くイズナ君の身体をハンカチで拭いてあげる。しかし、これからどうしようかな。
中々吹雪は止む様子はない。