「うぅ…」
「お妙さん、本当に乗り物ダメなんだね」
「ご、ごめんねえ……」
蒼月君の隣の席に座りながら申し訳無さに謝りつつ、彼の肩を借りて電車に揺られる度、私は気持ち悪さと吐き気を伴う苦痛に顔色を悪くする。
今までもそうだけど。
乗り物酔いで弱っているところを攻めてくる人はいなかったのよね。妖怪も正々堂々と戦う人が好きなのか、それとも弱った相手に勝った汚名を負いたくないのか。
「缶コーヒー、買ってくるわね」
「オレもジュース買おうかな。オヤジも何か買うな?」
「オヤジ様はお茶で良いさ。しっかし、うしおも糸色殿にベッタリだなあ?」
「そ、そんなんじゃねえやい!!」
私の前を歩いていく蒼月君の怒り様にクスクスと笑い、自動販売機を目指して歩いているととらが自動ドアに挟まり、バタバタと動いているのが見えた。
なんで、あんなところで遊んでるのかしら?
「わっ、と…」
ドンと肩をぶつけられ、ビックリしながら相手を見る。鬱屈とした何もかも相手が悪いと決めつけている瞳が一瞬だけ私を見つめてきた。
小さく頭を下げて謝ってくれたのかな?という程度に軽く頭を下げた彼に「次は気を付けてね。電車内でも転んだら危ないからさ」と伝えて、吐き気を堪えながら蒼月君、いつの間にか私より先に移動していた蒼月君のお父さんに話し掛けている。
「蒼月君、どうかしたの?」
「お妙さん、いや、なんでもねえよ」
「そう?困ったら話してくれて良いのよ?」
「うん。ありがとう」
そう言って笑う蒼月君の頭を撫でてあげると「こ、子供扱いしないでくれよ」と言われたものの、まだまだ貴方は私に比べると子供だと思うんだけもね。
ふと邪気を孕んだ視線に気付く。
「(妖怪?……いや、この法力の気配なら強羅?)」
私は蛮竜を手元に呼び寄せるのかを悩みながら酔い止め薬を飲み、缶コーヒーのプルタブを開けると席に座って缶の縁に唇を当てて、コーヒーを飲み始める。
来るなら相手になるけど。
彼の性格を考えると弱っている相手に攻撃を仕掛けてくることはないだろうし。やはり、この法力の出所は別人と考えるのがベストだ。
「イズナ君、コーヒー飲む?」
「いや、オレは良いかな。苦いし」
「そう、残念だわ」
私の胸元に埋まっているイズナ君の存在に今更気が付いた蒼月君は「そ、そんなところに妖怪入れても大丈夫なのかよ!?」と驚かれたけど。
「温かいし、フワフワよ?」
「いや、そういうことじゃ……」
「ハハハ、冗談だよ。心配してくれてるんだね、ありがとう。心配してもらえるのらすごく嬉しい」
「……ん」
やっぱり蒼月君は優しいなあ……。