蒼月君と別れて身体を休めるのに適した静かな場所を探していたとき、またしても視線を感じて後ろに振り返ると強羅と凶羅の二人が佇んでいた。
「退け。弱ったヤツに要はねえ」
「オジキ!?」
「行かせるわけないでしょう」
私の事を押し退けると凶羅は前方車両に乗っている蒼月君ととらのところに向かおうとしている。仕込み槍を彼の背中に突きつける。
しかし、凶羅の振るった風呂敷によって私の持つ槍は柄から霊槍の核たる穂先までも見るも無惨に砕け、彼は私を見ることなく次の車両へと向かった。
私も追いかけようとしたが強羅に肩を掴まれ、キッと睨み付けるように振り返る。
「離してくれる?」
「バカ言えよ。乗り物に酔ってるヤツが穿心角を手に入れたオジキに勝てるわけねえだろうが、せめて乗り物酔いを治してから突撃しろ」
「………凶羅って、そういう人なの?」
「まあ、オジキは強いヤツが好きだからな。弱っているヤツと戦うのは好きじゃないし、お役目様に何か言われてるみたいだぜ」
そう言うと強羅は私を支えるように手を握ってきた。なんなの?駅前に居たときは私を倒すためにギラギラと闘志を高めていたのに、今は私を守るみたいに立ち回って本当に分からないヤツね。
「────ッ。何か来たわよ」
「チッ。
強羅は忌々しげに呟くと同時に私を担ぎ上げ、まるで恫喝するように乗客の椅子を蹴り砕き、錫杖を振り回して彼らを追い立てていく。
一体、何が起こっているんだと後方車両に視線を向けた瞬間、巨大な口のようなものが見え、山の中に妖怪がいるのかとビックリしてしまった。
「糸色、てめえの蛮竜で引き剥がせるか!?」
「えぇ、行けるわよ。私は糸色妙だもの!!」
前方車両にある蛮竜を引き寄せるために手を伸ばすと車両の真横から地面を突き破るように蛮竜が現れる。人を避けて通ってくるなんて律儀ね。
ゆっくりと上段に構えた蛮竜を振り落とす。
「風の傷っ!!」
妖気の衝突する裂け目を切り裂き、妖怪の身体を押し退ける。しかし、瞬時に身体を再生させた妖怪は怒ったのか。無数の目を私に向けてきた。
「ハハハ、あなたの事を吹っ飛ばしたヤツなら此処にいるわよ。他のものなんて何もかも考えずに私だけに掛かってきなさい」
そう言って妖怪を煽るように手招きをする。
「強羅、結界よろしくね」
「オレは僧侶だ、人を守って妖怪をブッ殺す!」
「本当に野蛮ねえ~っ」
軽く言い合いながら車両を切り裂き、蛮竜を自由に振るえるように間合いを確保する。本当ならトンネルの外で戦いたいけど、悠長に待つなんて無理だからね。