「お妙さん!」
「蒼月君何で上に!?」
「強羅、お前が居ながら何故祓えていないッ!」
「アホ抜かせ!何度も法力を込めた独鈷ぶん投げても退かずに突撃してくるヤツだぞ!」
車両の中に降りてきた蒼月君と凶羅に背中を向けたまま私は蛮竜の結界を強める。何度も風の傷を打ち続けたらトンネルを支える壁が崩れて私達は身動きの取れない袋のネズミになってしまう。
それに酔いが酷くて相手を見つめて照準を合わせて狙うことが出来ない。本当に、私達の家系って乗り物酔いの呪いでも受けているのかと嫌な気分になる。
「(ゔっ…クソ、乙女にあるまじき危機だわ…)」
いっそのこと蛮竜を担いでアイツの上か地面に降りてしまえば多少なり自由に戦えるけど。あの触手と目の数を相手に隙を見せずに戦うのはかなり面倒臭い。
「俺はやらんぞ。その女と強羅の始めた事だ」
「オジキっ、今はそういうことを言っている場合じゃないだろう!今回はお役目様に糸色の護衛を頼まれ゛でガアッ!?」
「強羅よぉ…テメェは和羅に似て婆に懐きすぎなんだ。僧正になるためにテメェを俺みたいな破戒僧に預ける親父と婆のお使いがそんなに大事か?えぇ?」
「ぐっ、ぬうぅぅ……ッ。オレが大事にしてんのは親父でもお役目様でもねえッ、手の届く範囲だけを守りたいんじゃないッ!オレは誰にも屈しねえオジキみてえに強い僧になりてえんだよ!!」
裏拳を叩き込まれた強羅が壁に身体をめり込ませ、苦痛に呻きながらも立ち上がって凶羅の事を睨み付け、心の内をさらけ出すように強羅は真剣に彼の狂気を宿した目を見据え、自分自身の想いを語った。
意外と情熱家だったりするのかしら?
「喧嘩する暇があるなら手伝ってくれる?」
「お妙さん、オヤジも呼んでくる!」
「ありがとう。蒼月君、とらがいないからイズナ君も着いていってあげてくれる?」
「おう!」
私の服の中から出てきたイズナ君に強羅の動きが固まったように感じたものの、直ぐに頭を振って結界を張ることに意識を集中してくれた。
「飛び道具があれば良いんだがな」
「私はピストルとか持ってないわよ」
「んな物騒なもん持ってるのにな!」
トンネルの壁面を削って結界に突撃を繰り返す巨大な真っ黒焦げのハンペンみたいな妖怪を阻みつつ、どうにか倒す方法を模索する。
こういう大きなヤツと戦ったときの話は光覇明宗にも残ってそうだけど。強羅も凶羅も知らないみたいだし、弱点が何か分からばいいんだけどね。
「糸色殿、如何され……凶羅!?」
「貴様は紫暮…!」
なんだか今回は睨み合いがすごいわね。