真夜中の午前0時を越えると同時に駆け出していく蒼月君を見つけ、一抹の不安と安心を抱きつつ、私は宿泊先に帰る前に銭湯へ行くことにした。
彼の行く先を知っているけど。
予言を外す事も考え、待機するのは流石にやり過ぎたし。蒸し暑い夜のせいか、汗を掻いてシャツが張り付いてベタベタする。
さっさとお風呂に入りたい。
「……で、オジサン達は誰なのかな?」
「我らは光覇明宗の僧侶、お主の持つ蛮竜並びに所持する霊槍をお渡し戴きたく馳せ参じた次第。余り手荒な真似はしたく無い故、素直にお渡し下さいませ」
「蛮竜を渡せって言うけどさ。あの大鉾は糸色の血族以外には使えないわよ?まあ、言って無駄だろうから試しに持たせてあげるけど」
シャランと錫杖を揺らす五人の法衣を身に付けた光覇明宗の僧侶達の言葉を聞き流して無視することは出来るけど。みかど市に入ってから、ずっと監視を受けるのは本当に面倒臭くて嫌だった。
「来なさい、蛮竜」
その言葉と共に青白い雷光を纏って飛来した身の丈を越える大鉾を地面に突き刺し、僧侶のオジサン達に「後はお好きにどうぞ」と言い残して、自動販売機を探すも近所には見えない。
自動販売機は在るけど、アレは煙草っぽいわね。
「遂に蛮竜が我らの手にッ!!」
興奮気味に上擦った声で蛮竜の柄を掴んだその時、オジサンの身体が青白い雷撃に貫かれ、危うく感電死する寸前まで身体を雷撃に襲われて弾き飛ばされる。
「一人脱落。ぱぱっと終わらせてくれる?」
「ぐぬっ、私なら持てるはずだ!」
そう言って果敢に蛮竜を触った瞬間に熱風を受け、吹っ飛ばされてお寺の塀を突き破って吹き飛び、血反吐を吐いて気絶した。
あとチャンスは残り三人分だけど。
「止めよ。糸色殿、お主は何を考えている」
「蒼月紫暮…!」
「おお、彼ならば!」
「光覇明宗の傲慢さを教えているだけだよ」
蒼月君のお父さんの登場に色めき立つオジサン達の言葉を遮り、そう素直に思った事を伝える。百年前、光覇明宗を設立した人と本家は知り合いだからね。
「まあ、そのせいで『予言書を管理するのは我々だ』や『何も知らぬ者は引っ込んでいろ』と宣った分、しっかりと私達には見定める権利はある」
私の言葉に反論しようとするけど。どこか後ろめたさがあるのか、残った三人は顔を俯かせ、傷付いた二人の仲間を背負って帰ってしまった。
「───何故、お主は平然としている」
何処か自答する様な言葉にクスリと笑ってしまう。
「決まっているでしょう。私が私だからよ」