かなり長く山魚の相手をしているというのに、一向に手助けも来ず、コイツを倒す術も見つかっていないのかと少し焦りながら、真後ろで高まり始めた法力の気配に気付き、とらの身体を髪の中から引きずり出して、電車の屋根に飛び乗る。
「ぷふう~~っ、息苦しかったぜ。さっきはよくもやってくれたなあ、この魚風情がよぉ」
「とら、一発勝負になるけど。やる?」
「あぁ?……お前、まさかッ!?」
壊れた電車の屋根から車両内を覗けば強羅や凶羅、散々文句を言っていた乗客のみんなが穿心角に向かって法力を集めている光景が見える。
ここでやらなければ絶対に意味がない。
「糸色、準備出来たぞォーーーッ!!!」
「お妙さん、下がって!」
「聴こえているわよ」
凶羅の極まった形相に苦笑いを向け、とらと一緒に穿心角の当たらない場所に立ち、私は蛮竜を脇構えに構えるととらも口の中に火炎を蓄え始める。
「穿心角降魔射法の一、威颶離ィッ!!!」
巨大な渦を成して弾き出された穿心角が山魚の身体を真っ二つに切り裂き、抉り穿った刹那の瞬間に溜め込んでいた蛮竜の妖気を解放するように刀身を振り上げる。
「爆流破ァ…!!」
「儂の妖気は高くつくぞ家来がぁっ!!」
とらの放った妖気の火炎を巻き込み、穿心角の纏っていた法力さえも取り込み、荒々しく吹き抜け、無数の竜巻が山魚の身体を貫き、粉々に破壊していく。
風の傷では傷付かなかった山魚の身体にとらの火炎と穿心角の法力も合わされば大抵───いや、白面の者以外の妖怪なら何でも倒すことが出来る。
ゆっくりと屋根から頭だけ下ろして、傷だらけの人達が笑い合う姿に満足しながら不服そうな凶羅と疲労困憊の強羅の二人にクスクスと笑ってしまう。
「ありがとう。助かったわ」
「おう。乗り物に弱いのに悪いな」
「ふん、蒼月ととらを殺すのは俺だ。それまで糸色だろうがなんだろうが関係無い、俺は俺のやりたいように妖怪をブッ殺しただけだ」
「ありがとうは受け取ってよ。凶のおじ様」
「きょ、きょうのおじさまだぁ?」
「えぇ、これからはそう呼ばせて貰うわ」
そう言うと凶羅は呆れたように私を見たかと思えば大声で笑い始め、強羅の肩を何度か叩いたかと思えば人混みを掻き分けて先頭車両に行ってしまった。
「お妙さん、大丈夫だった?」
「私は大丈夫だけど、蒼月君の方が酷いじゃないの、ほら顔を拭くからおいで」
「い、いいよそんなの!?」
「けっ。コイツはいっちょ前に照れてやがるぜ」
照れる?私とはいつも話しているのに、どこに照れるような要素があったのだろうか。