夏休みから始まった五ヶ月に及ぶ蒼月君ととらとの冒険は終わり。なんだか感慨深くあるけど、分家の人達のやりたかったことも何となく分かってきた。
蒼月君に対して劣等感や罪悪感を抱かせて、私を当主の座から引きずり落として自分達の選んだ傀儡を据えて自分達の都合の良い世界にしたいんだろうね。
才賀グループと業務提携している奴らは特にそういう願望は強い。まあ、あからさまに襲撃を仕掛けてきたりする当たり、向こうの雇った奴らも不本意な攻撃や監視だったことは分かっている。
「糸色殿、ご帰宅はいつ頃に?」
「一応、一週間後の予定だけど。蒼月君のお父さんとしては息子に近付く糸色家の女は怪しく思える?それとも白面の者が糸色に執着する理由を知りたい?」
「どちらも聞きたいところだが、私は無闇に人を傷付ける行為はしたくない。それに糸色殿はそちらの技術は不得手なご様子……」
「ハハハ、正解だよ。流石は蒼月紫暮」
確かに色恋沙汰は苦手だ。
現に私は流君や杜綱悟、強羅の私に向ける視線の意味は知っているのに、気恥ずかしさに気付いていないふりをしている。好きと言われて嬉しかったものの、やはり私は糸色の血筋だ。
どうやっても愛する者と結ばれたら執着し、その人に対して重たい感情をぶつけることになる。と、私はお母様に聞いている。
あの人は物凄いお父様大好きだし。
結婚、もしくは恋人が出来たら私もああいう風に面倒臭い人間になるのだろうかと想像する。───けれど。まあ、それも悪くないと思える人はいた。
「それで蒼月君の容態は?」
「今も眠っている……が、飯を食うときは起きるし、とら殿に襲われるときは迎撃している。なにやら獣の槍も潮に惹かれている様で面白くもある」
「まあ、
「それは糸色殿も似たようなものだがね。どれほど強大な恐怖を前にして何事もないように笑みを浮かべ、美しく舞うように戦う。光覇明宗ではもっぱらの噂になっているほどだ」
とんでもない偏見ね。
私が戦うときに笑顔なんて。いや、微笑んでいるつもりはないけど、妖怪と戦うときに強い相手と戦えることを喜んでいるのは事実ではある。
でも、美しく舞うようにっていうのは違うわね。
「故に、貴女には今暫く潮を見守ってほしい」
「……その申し出はとても嬉しいけど、見守ることはしないわよ。あの子は自分の足で立って真っ直ぐ歩いていけるからね」
そう言うと蒼月紫暮は頷いてくれた。